2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05372
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松岡 良樹 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 可視銀河系外背景光 / 暗黒星雲法 / 銀河拡散光 / クエーサー |
Research Abstract |
本研究は、銀河系内に存在する暗黒星雲による遮蔽効果を利用して、銀河系外からやって来て可視光で観測される光の積分「可視銀河系外背景光」を検出すること、検出した背景光を既知の銀河積分強度と比較して超過の有無と、超過が発見されればその起源天体を探査することを目的とする。背景光検出の最大の障害となるのが、背景光に比べて圧倒的に強い前景光(地球大気放射、黄道光、星の光、および銀河拡散光)であり、その大部分をモデルに依存せずに除去できるのが本研究の手法「暗黒星雲法」の最大の特長である。 採用第1年度である平成19年度は、暗黒星雲法によっても除去しきれない一部の銀河拡散光の影響をさらに最小にすべく、2つの方面で大きな進展があった。一方では観測の側面から、銀河系最外縁部に存在する分子雲を使うことで「前景光」そのものを最小にするという方針で研究を行った。前年度にアメリカ・キットピーク観測所の0.9m望遠鏡と広視野カメラで得られたデータを詳細に解析し、背景光の測定に耐える高精度の広視野データを取得している。その最終の分析は第2年度の課題である。他方では銀河拡散光の理論の側面から、星と星間塵が一様に混在する近似的状況に対して観測される光強度のモデリングを行い、観測によく一致する結果を得ることができた。実際の暗黒星雲フィールドへの適用は、この方面の第2年度の課題となる。 可視銀河系外背景光の検出・測定が天文学の中で極めて重要な位置を占めるのは、既知の天体積分強度からの超過を調べることによって、宇宙における未知・未検出の天体からの光を直接捉えることができるためである。そのためには当然ながら、既知の天体種族からの光の寄与をあらかじめ正確に知っておく必要がある。特に宇宙で最初に誕生した第1世代星や宇宙初期のクエーサーなど、宇宙再電離(宇宙の晴れ上がり以降中性だった銀河間空間が、赤方偏移10あたりで再び電離された現象)を引き起こした候補天体については、背景光超過の有力な候補にもなり得る。平成19年度はこのような観点から、背景光検出の観測的試みと並行して、特にクエーサー光源に関する調査研究も活発に行われた。5月にはハワイの英国赤外線望遠鏡を用いてクエーサー光源の性質に関する調査、また7月にはチリのセロ・トロロ観測所4m望遠鏡を用いて高赤方偏移クエーサー探査のための観測を行った。前者は残念ながら悪天候に阻まれて有意な結果は得られなかったが、後者に関しては現在データの解析が進行中である。 これらの研究の中間報告のため、国内外の研究会に積極的に参加して成果発表を行った。学会誌での発表論文も平成19年度は3本(掲載確定済を含む)。これら採用第1年度の研究成果を踏まえ、第2年度には本研究の最終目的に到達すべく、さらなる研究の発展が〓る。
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