2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05380
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
美多 剛 Keio University, 理工学部, 特別研究員(SPD)
|
Keywords | 塩化水素 / 不斉ヒドロ塩素化 / チオウレア / ホスフィン / 多点制御触媒 / アジリジン / 単純アルケン / 国際情報交換 |
Research Abstract |
平成20年度も引き続き米国ハーバード大学、化学生物学科のEric N.Jacobsen研究室で研究を行った。塩化水素は、現在世界的に製造されており、多くの工業プロセスに積極的に利用されている。また、安価でしかも調製容易であることから究極の塩素化剤であり、実際アルケンやアルキンなどの炭素-炭素不飽和結合に対して容易に付加反応が進行することが知られている。しかしながら、金属触媒存在下では、その強い酸性から触媒を失活させうるため、金属錯体触媒を用いるエナンチオ選択的なハロンゲン化反応では、NCS,NBS,NISのような正電荷を有するハロゲン化剤を用いるのが一般的であった。 Jacobsen研究室では長年にわたりチオウレアを基本骨格とするキラル有機触媒の開発が精力的に行われており、この研究を基盤として、報告者はチオウレアとホスフィン部位を有する多点認識型の触媒が塩化水素を効率良く活性化し、メソアジリジンに対してエナンチオ選択的に付加することを見い出した。すなわち、塩化水素の塩素アニオンをチオウレアが捕獲し、そのカウンタープロトンにホスフィンが配位することで、塩化水素のイオン的な乖離が起こり、反応が加速されると共に、効果的な不斉環境場が構築されると推定している。実際、このメソアジリジンに対する不斉ヒドロ塩素化で、70-92%eeという高い不斉収率が達成された。ReactIRを用いた反応解析より、ホスフィノチオウレア触媒を用いることにより無触媒反応に比べ、140倍もの反応加速効果が観測されている。また、31P NMR解析により、反応系中ではリン原子が量論的にプロトネーションされていることを突き止めた。現在、単純アルケンに対する不斉ヒドロ塩素化の検討を行っており、この不斉反応が実現できれば真に有用な反応になることは確実であり、報告者はこの二年でその足がかりを築くことができた。
|
Research Products
(3 results)