2007 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化に対する北方森林生態系の反応:電熱線を使った野外操作実験による検証
Project/Area Number |
07J05387
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 誠宏 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 地球温暖化 / 野外操作実験 / 林冠 / 植食性昆虫 / 植物形質 / 食害度 / 林冠クレーン / 林冠ジャングルジム |
Research Abstract |
北海道大学苫小牧研究林の冷温帯の代表的な森林であるミズナラ自然林において、電熱ケーブルを用いて地下部を温暖化する操作実験を行った。この実験では15m以上の林冠構成樹木を扱っている。本研究の目的は「地下部温暖化が遠くは離れた林冠部での植物-昆虫の相互作用に与える影響を解明する」ことである。温暖化の操作実験は林冠部が観察できる林冠クレーン及びジャングルジムのあるサイトにおいて行った。前年度(2006年の7月)の調査で、処理する予定の5個体と対象とする予定の5個体の間で食害度に有意な違いは見られなかった(P=0.24)。そこで、2007年5月において5m x 5mの処理区をつくり、地下に電熱ケーブルを10cmの深さ、20cm間隔で埋めることでミズナラ樹木個体の地下部の温暖化処理を行った。温度調節機を使って100年後を想定して5℃の温度差を維持した。調査は、2007年6月と8月に林冠部上部と下部の食害度を目視で測定した。さらに、葉を採集して植物形質(LMA,窒素,C/N比)の分析も行った。地下部の温暖化は葉の窒素とC/N比に影響を与えた。モデル選択から6月も8月も葉形質は同じ結果が得られた。LMAは位置が選択され、窒素は処理が選択され、C/N比は処理、位置と処理*位置が選択された。この結果は、LMAは林冠上部に行くにつれ増加するが処理の影響は受けないこと、窒素は処理により低下するがC/N比は増加することを示している。さらに、地下部の温暖化は林冠部の食害度にも影響を与えた。6月の食害度はモデル選択から処理と位置が選択され、8月の食害度は処理のみが選択された。この結果は、どちらの月も処理により食害度が低下することを示している。この食害度の低下は葉形質の窒素とC/N比から説明できた。
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Research Products
(3 results)