2007 Fiscal Year Annual Research Report
XAFS法を用いた酸化還元反応過程の解明に基づくアンチモンの環境地球学
Project/Area Number |
07J05430
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
光延 聖 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アンチモン / XAFS |
Research Abstract |
これまでの我々の研究から、アンチモン(Sb)は土壌中の水酸化鉄に取り込まれること、還元的環境では溶出しやすいヒ素とは異なりSbは還元下で固相に吸着しやすいことがわかった。この結果のうち、還元的環境で、Sbがより固相に分配されることは未解明な知見であり、更なる研究が必要であった。 そこで、本年度は還元環境下でのSbの挙動を詳細に明らかにするために、(1)天然土壌中のSbの局所スペシエーション、(2)室内実験によるアンチモンの還元実験を行なった。以下にそれぞれの説明をする。 (1)かってSb鉱山であった市之川鉱山(愛媛県西条市)の坑口周辺土壌を深度別に採取し、還元的な試料(Eh=-107mV, pH7.7)を実験に用いた。土壌試料は50μm程度の薄片にして測定に供した。マイクロビームX線を用いたμ-XAFS解析の結果から、Feを含む周縁部にSb(III)が特異的に濃集していることがわかった。これは、還元的環境でSbが溶解度の低いSb(III)に還元され、Sb_2O_3として固相表面に沈殿したことを示しており、このことが還元的環境でSbが固相に分配しやすいことに影響すると考えられる。 (2)土壌中での強い還元剤として注目されている鉄水酸化物(green rust)へのSb(V)の吸着還元実験をおこなった。その結果、green rustはSb(V)に対し還元能をもち天然環境中でSbの還元剤となりえることがわかった。また、green rustとSbの相互作用について以下のような知晃が得られた、(i) Sb (V)はGRと内圏型の吸着錯体を生成する、(ii) Sb (V)の還元にはgreen rustの層間へのアクセスのしやすさが大きく影響する、(iii) Sb (V)の存在によって準安定相であるgreen rustの安定性が上昇する。 このように本年度は還元的環境下でのSbの挙動を詳細に考察した。最終年度となる来年度は、より酸化的な土壌環境下でのSbの挙動、特にSb (V)のFe水酸化物への吸着機構について検討を進めたい。
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Research Products
(5 results)