2007 Fiscal Year Annual Research Report
真理手続としての詩作、真理の身体としての詩-ポンジュとミショーを中心に-
Project/Area Number |
07J05432
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梶田 裕 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 真理手続 / 真理の身体 / 識別不可能性 / ジェネリック性 / 出来事 / リズム / ポエジー / 実存 |
Research Abstract |
まず、理論的・哲学的研究として、バディウとデリダの対照を通じて、真理手続の概念が、「識別不可能なもの」の「今・ここ」における産出として、近年支配的となっている「来たるべもの」のメシアニズムから一定の距離を置くことを確認した。そこから、脱構築には、「出来事」の諸帰結をある特定の世界の中で局地的に展開し、世界を実質的に変革していくような「出来事の身体」の論理が欠如していることを示した。この考察を通じて、そのような展開を担う「新たな身体」の可能性の問いが、今日の哲学的思惟にとって本質的であることを確認し、バディウの「ジェネリックな多数性」の概念を、そのような問いの最も完成された概念化の試みとして検証した。以上の理論的前提をもとに、詩作を真理手続の操作として、また詩をそのような真理の身体として規定することの可能性を、フランシス・ポンジュの「示差的質」の問題の中に見いだそうと試みた。この研究では、ポンジュがその詩作の根源に据えている事物の「示差的質」を、その本質的「何性」としてではなく、むしろそこから逃れ去る識別不可能な「実存」そのものの様態として捉えることで、ポンジュの詩作を事物の出来事的実存の言語による開示として規定するための前提が準備された。またそこでは、実存の事実性を開示する存在論的な「気分=情的音調」の問題と「リズム」の概念の可能な接近が示され、存在者を現前の場にもたらす根源的なテクネーとしてのポエジー、存在者の現前性の場への現われがその都度示す形象としてのリズム、そして出来事としての実存という3つの概念の理論的な布置の解明が今後の課題として取り出された。また、ここでは出来事と存在の同一性というハイデガー的テーゼが前提とされており、存在と出来事を分離するバディウとの対照が、やはり今後の不可欠な課題として明らかになった。
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Research Products
(1 results)