2008 Fiscal Year Annual Research Report
真理手続としての詩作、真理の身体としての詩-ポンジュとミショーを中心に-
Project/Area Number |
07J05432
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
梶田 裕 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 真理手続 / 脱自的実存 / 遊戯 / 文学の政治 / バディウ / ランシエール |
Research Abstract |
前年度に行った学会発表に基づき執筆した学会誌論文は、フランシス・ポンジュにおける「示差的質」の概念を、事物が有する自己差異化能力である脱自的実存として捉える試みであったが、今年度は、事物の真理をなすと言えるこの脱自の運動を、ポンジュが「物喜び」と呼んだもののなかに読みとると同時に、このような運動を捉える言語使用としての詩作を、ポンジュが「物遊び」と呼んだ「遊戯」の概念のなかに読みとることを試みた。事物の自己差異化は、事物がその「自然な」自己規定から身を引き離すことであり、日常的な連関からの事物のこのような抜け去りを、ポンジュは事物の歓喜と捉え、そこに「享楽する真理」を見たのである。そして、日常的な連関を中断する操作こそ、「遊戯」としての詩作にほかならない。かくして、「示差的質」、「物喜び」、「物遊び」というポンジュの詩作における根源的な諸概念の論理的基盤の解明がなされた。この考察は、単にポンジュ研究にとどまらず、詩作ないし芸術をめぐるより広範な哲学的ないし論理的考察の一環をなしている。それは、詩作をアラン・バディウの言う「真理手続」として捉える試みだが、このような観点から、ポンジュの詩作を論じるデリダの脱構築的言説を、「真理手続」との対照を通じて解明すると同時に、その限界を浮き彫りにする試みを、『シニェポンジュ』の拙訳の「訳者解題」のなかで行った。また、同様の試みを、芸術と並ぶ真理手続のひとつである政治に関しても展開するべく、芸術と政治の関係をめぐるジャック・ランシエールの思想の研究に、彼の著作の翻訳や対談を通じて着手した。ランシエールにとって政治とは、地位や能力の階層化された配置のなかで規定された個人や集団の「自然な」行き先=用途が中断されることで、この配置の全般的な再編成を誘発するプロセスであり、この点で、芸術と交差しているのである。
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Research Products
(3 results)