2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05446
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松尾 登史子 Kyushu University, 人文科学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 古代マケドニア / 古代ギリシア / ヘレニズム / ペラ / ヴェルギナ / 墓葬 / 古代都市 / アレクサンドロス |
Research Abstract |
本研究の目的は、古代マケドニア王国の都市、特に王都ペラの成立と発展を捉え、ヘレニズム諸都市の源泉としての特質を解明することである。平成19年度では、本研究の基礎を築き、また分析に用いる通時的視点かつ演繹的な考古学的手法を確立すべく、現地にて考古資料の選定と基礎資料の収集にあたった。その結果、「都市(ポリス)」を解明するにあたり、その影ともいえる「死の都市(ネクロポリス)」の存在の重要性が認識された。古代マケドニアの埋葬形態は極めて特徴的であり、特にマケドニア独特の室墓である「マケドニア墓」の存在が注目されている。これは、蒲鉾型屋根およびギリシア神殿風の正面を擁し、その埋葬主体部を墳丘で覆ったものである。葬室内部は、都市生活の延長と考えられる内装が設えてあり、被葬者は明らかにマケドニア上層階級とみられる。この墓形態が現れた紀元前3世紀第3四半期は、王国がアイガイからペラへ遷都した直後であり、王国の急成長期そして絶頂期にあたる。元来遊牧民であったマケドニア人が都市生活を獲得し充実させていく中、墓形態もそれに応えるかのように様相を異にしてゆく。この光と影というべき「ポリス」と「ネクロポリス」が互いに連動しながら変遷する様相について、新王都ペラに焦点を当てつつ中央マケドニアの諸都市を含めた地域における分析を行い、マケドニア社会の構造を明らかにすることを具体的な目標として設定するに至った。これに従い、古代マケドニアの都市及び集落、墓域の資料を収集した。そして、墓資料を中心とした分析を開始、つまり、「マケドニア墓」埋葬主体部のデータに基づき、分析を行なった。今年度末現在、この過程にて派生した問題(埋葬主体部正面形態の様式等)に取り組みつつ、他の墓葬形態(石棺墓、岩削石室墓等)との関連についても検討しており、これらの成果は、本研究の基礎を確立させたものとして来年度に生かされると確信する。
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Research Products
(4 results)