2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05452
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安井 千香子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1
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Keywords | 赤外線天文学 / 初期質量関数 / 星生成 / 銀河系最外縁 |
Research Abstract |
星が生まれながらに持つ質量の分布、「初期質量関数(IMF)」はどのようなフィールドや星団を観測してもほぼ同じ形を持つことが知られてきた。しかしこれまでは、初期質量関数は太陽近傍と似たような極めて限られた環境下でしか調べられてきていない。そこで、星の生成過程でその質量を決めるのに最も効果的な要素である「金属量」が太陽近傍とは大きく異なる環境下での初期質量関数を観測的に調べている。太陽近傍と金属量が異なる領域として、私は銀河系の最外縁部に着目している。銀河系の最外縁部とは、銀河系の中心から太陽までの2倍以上離れたような領域のことで、金属量が太陽近傍に比べて約1/10と非常に少ないことで知られている。その研究の第一歩として、銀河系最外縁部の銀河中心から約20kpcの最外縁部に位置に存在する約10個の星生成クラスターを近赤外線で観測し、質量が太陽の10分の1以下に達する暗い星までの検出に初めて成功した。その中で、これまでに星生成の基本的な諸量を調べた2クラスター(Cloud 2-N,2-S cluster)について、明るさと年齢の関係を用いて光度関数のモデルを作り、クラスターでの光度関数のフィッティングから、低金属量下での初期質量関数を初めて精密に導出した。その結果、1)そのピークが太陽質量の約0.3倍であること、2)その傾きがこれまでの初期質量関数とほぼ同じであることがわかり、銀河系外縁部のように金属量が大きく変わる環境でも初期質量関数は太陽近傍での普遍的な形の初期質量関数と矛盾が無いことを初めて示唆した。一方、2つのCloud 2 clustersで小質量星がやや少ないという傾向も見られた。これは、低金属量下では、小質量星が生成されにくいというこれまでにあった理論的示唆を直接示しているのかも知れない。 また、Cloud 2 clustersとは別に、新たに銀河系最外縁部の巨大星生成領域S209を用いて同様に初期質量関数を求め、日本天文学会で発表した。今後は、引き続き、既に観測を行った銀河系最外縁部の約10個の星生成クラスターについて同様に初期質量関数を求め、低金属量下の初期質量関数の太陽近傍との微妙な差異を求める予定である。
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Research Products
(3 results)