2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05461
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
景山 洋平 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 実存 / 現象学 / 存在論 / 解釈学 / ハイデガー |
Research Abstract |
本研究は、ドイツの哲学者マルティン・ハイデガー(1889-1976)の思想形成について、人間の日常的生とその本来的な実存様態との緊張関係を読解の基軸とする包括的な理論的解明を行い、その今日的な意義を明らかにすることを目的とする。これについて平成20年度では、第一に、1910年代にハイデガーが実存概念を自らの存在論の核心部分に位置づけるにいたった理論的必然性を彼の内的動機と当時の思想状況から解明し、第二に、1920年代のハイデガーの解釈学的哲学が日常的に与えられる志向的生のうちに実存現象を位置づける際の論理を明らかにし、第三に、1920年代末のハイデガーのカント解釈を手がかりとして前期ハイデガー存在論の構造を総括すると共に、その方法論的矛盾を明らかにすることで、後期ハイデガーの事象的視座を捉える為の解釈基盤を構築した。 第一の成果により、これまでその連続性が不明確であった1910年代のハイデガーの思想形成過程に一貫した見通しが与えられ、また、これにより、当時のハイデガーが影響を受けたカトリック哲学、反心理学主義的論理学、新カント派の認識論、生の哲学、発生的現象学、実存思想といったさまざまな思想潮流に対するハイデガー哲学の位置づけが明らかとなった。第二の成果により、従来の研究では曖昧に残された実存の解釈学の前提と論理的内実が明らかとなり、哲学史研究の形をとって様々な姿で提示される1920年代のテキストを統合的に解釈する可能性が開かれた。第三の成果により、従来「超越論哲学の挫折」という曖昧な仕方で理解されていた前期ハイデガー存在論の矛盾が、発生的アプリオリの探求の自己矛盾として新たに明確化され、また、これにより、この矛盾への対応として後期ハイデガーが手にしえた事象が包括的かつ分節化された仕方で解明された。
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Research Products
(4 results)