2007 Fiscal Year Annual Research Report
感覚子と脳神経から見た化学物質を介するアリの巣仲間識別に関する研究:融合巣の成立
Project/Area Number |
07J05478
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 碧 Kobe University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 体表炭化水素 / 順行性染色 / AMIRA / エゾアカヤマアリ / クロオオアリ / アルゼンチンアリ |
Research Abstract |
まず今年度は、研究期間開始年度のため、研究対象である非融合性種であるクロオオアリ、および、融合性種であるエゾアカヤマアリ(以下、エゾアカ)、アルゼンチンアリ(以下、アルゼンチン)2種の計3種において、野外採集および飼育体制を整えながら実験を行った。融合性種とは同種の他巣個体が巣間を自由に行き来できる性質を特性を持つ。クロオオアリは神戸大学付近で、エゾアカは北海道、札幌市石狩浜付近にて採集。これを研究室内において飼育を行っている。アルゼンチンは、特定外来生物種のため、現在、環境省に飼育許可申請書を提出しており許可が下り次第、各所にて採集のち飼育を行う予定である。 個体の行動のPC解析はコンピュータ不具合の為、予備実験の域を出ていないが、野外における他巣個体に対する攻撃行動観察では、エゾアカにて興味深い結果が得られた。融合性を持つエゾアカであっても巣間距離が大きくなるに従って攻撃行動を多く見せる傾向が見られた。同種に対しては著しい攻撃行動が見られなかったが他種に対しては容赦ない攻撃が見られた。また、ガスクロマトグラフィーを用いた体表炭化水素の解析の結果、クロオオアリの体表炭化水素、組成種類は18種類であったが、エゾアカでは25種類以上と多種類であった。アルゼンチンについては野外にて抽出を行ったが、分析機器の都合上、分析は今後の予定である。エゾアカの体表炭化水素の分析に時間がかかり、分析炭化水素運搬蛋白質の同定には着手が遅れ、今後の実行予定である。 飼育可能なエゾアカについてのみ、触角からの順行性染色を行った。その結果、糸球体の染色組織画像を得られたが、クロオオアリとの比較に必要な画像処理に今後である。現在は画像処理ソフト、AMIRAの操作習得中である。エゾアカについての攻撃行動結果やガスクロマトグラフィーの分析結果は、現在9月の学会発表用、また投稿論文用にまとめている。今回の結果から、融合性種の巣仲間識別について、認識能力の存在が明らかになった。この事実は巨大コロニーを形成するアルゼンチンアリ等の外来種対策における基本的考えとなると思われる。
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