2007 Fiscal Year Annual Research Report
啓蒙の世紀における数学・物理学を中心としたヨーロッパ自然科学研究とその教育法
Project/Area Number |
07J05568
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
但馬 亨 Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 啓蒙の世紀 / 科学史 / 数学史 / 科学教育 / フランス科学アカデミーの歴史 / 代数学教科書 |
Research Abstract |
今期の研究目標は近代ヨーロッパの数学および自然科学書の収集および内容の分析,そして国外の研究者との情報交換の2種であったが,いずれも2007年内の国内外の調査で実行された. まず,前者に関しては,2007年夏に東京大学総合図書館所蔵の近代フランスで用いられた古典的数学の教科書群について,そのデジタル資料化を進めた.なかでも,ラクロワ(Sylvestre-Frangois Lacroix,1765-1843)による『微分積分論考』(Traite ducalcu differentiel et du calcu integral)第2版は,国内所蔵は同館のみのため極めて貴重であり,この他にも同館の書庫に所蔵が限定される解析学関連の貴重書を多く発見した.その多くは劣化が激しく保存状態のさらなる悪化が予想されたため,ただちにデジタル化した.これは資料保存や今後の研究者の資料アクセスの観点から有意義である,同様に2007年末,フランス・アンリ=ポワンカレ研究所のオイラー関連の貴重資料についても調査・デジタル化を行った. その収集資料群において,今年度集中的に分析したのは,18世紀の代数学教科書であるオイラーによる『代数学全教程』(Vollststandige Anleitung zur Algebra)である.この作品は著名であるにも関わらず,テキスト成立についての科学史・歴史学的な批判的分析がなされていなかった.本研究ではこの点を問題視し,とりわけ重要な転機となったフランス語訳の成立経緯を解析した.この結果,すでに確立していたオイラーならびにその著作の権威が,フランス科学アカデミーの数学者たちにより自説流布のために利用された,という事実を見出し学会発表ならびに論文において指摘した. 最後に,海外研究者との情報交換としては,2007年12月7日にアンリ・ポワンカレ研究所主催のオイラー生誕300周年記念シンポジウムでBergische Universitaet WuppertalのMaarten Bullynck氏と解析力学ならびに弾道学の諸問題についての議論を行った.同氏はオイラーの数学研究のみならず応用力学に関する諸問題に関しても専門的知識を有しており,とりわけ軍事技術に関するより広い文脈から指摘を受け,自身の研究に役立てた.
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Research Products
(4 results)