2008 Fiscal Year Annual Research Report
ベルナルド・ベロット及び18世紀景観画における絵画的源泉についての研究
Project/Area Number |
07J05588
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金沢 文緒 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ベルナルド・ベロット / 景観画 / 美術アカデミー / 18世紀 / 16世紀ヴェネツィア派 / コレクション / 複製版画 / ドレスデン |
Research Abstract |
今年度は、昨年度の海外での研究調査において収集された情報をベルナルド・ベロット及び18世紀景観画家における絵画的源泉を探る本研究のテーマの観点から解釈し直し、統合することに力点を置いた。その研究成果は、今年5月に行われる美術史学会第62回全国大会における口頭発表(査読通過済)及び同学会誌への投稿論文「ベルナルド・ベロット作《ヴェネツィア行政官の衣装を着た自画像》に関する一考察-対作品《神殿から商人たちを追い払うキリスト》との関係において-」によって示す予定である。 この研究は、ベロットが1765〜66年にかけてドレスデンにおいて制作した《ヴェネツィア行政官の衣装を着た自画像》と《神殿から商人たちを追い払うキリスト》の対幅に焦点を当てたものである。両作品は、景観画家ベロットが専門外の絵画ジャンルに挑戦した極めて異例の作品であるが、景観画をその絵画ジャンルの中で限定的に取り扱ってきた従来の景観画研究においては両作品の制作背景は不明とされてきた。今回ベロットの両作品に見られる各要素を分析した結果、18世紀当時ドレスデンに所蔵されたエル・グレコ作の宗教画が作品の着想源であったことが明らかとなった。景観画家と他の絵画ジャンルの作品との接点を模索することで新たな視点を提供する報告者の研究の目的において、一つの有効なデータケースを提示することができたと考える。 また、本研究がベロット周辺の画家の芸術交流を繋ぐ存在として注目してきた18世紀ヴェネツィア風景画家フランチェスコ・ズッカレッリのカタログ・レゾネについての書評が『18世紀学会年報』に掲載となった。この書評において、近年の18世紀イタリア風景画研究において看過されてきたズッカレッリの歴史的意義を定義した。
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Research Products
(1 results)