2007 Fiscal Year Annual Research Report
捕食者と被食者の適応的な形態変化:表現型の可塑性と生物群集をつなぐ
Project/Area Number |
07J05644
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸田 治 Kyoto University, 生態学研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 表現型の可塑性 / 誘導防御 / 誘導攻撃 / 生活史 / 形態 / エゾアカガエル / エゾサンショウウオ / 多型 |
Research Abstract |
表現型可塑性の生態学的意義及び環境依存性について理解を深めるために、エゾアカガエルの幼生とそれらを捕食するエゾサンショウウオ幼生にみられる対抗的な形態変化に焦点をあてた2つの研究を行った。 1.カエル幼生の誘導形態防御の生態学的意義を明らかにするため、野外池に設置した囲い網のなかで、防御形態を発現したカエル幼生と、発現していないカエル幼生を、それぞれサンショウウオ幼生と相互作用させ2種の個体数変化を追った。防御形態を持たないカエル幼生がいる網に比べ、防御形態をもつカエル幼生がいる網では、カエル幼生の生存率は高かったが、サンショウウオの生存率は低かった。特に、小さな顎をもつサンショウウオほど生存率が低かった。これらの結果から、カエル幼生の防御形態は、彼らの個体数の維持に寄与するだけでなく、サンショウウオ幼生同士の共食いを強めることで、サンショウウオの個体数と集団内の表現型構成に影響することが示唆された。 2.可塑性の環境依存性と生態学的意味を理解するため、サンショウウオ幼生とカエル幼生の形態可塑性に、上位捕食者がどのように影響するのか調べた。ここでは、上位捕食者として、サンショウウオの越冬型幼生に注目した。越冬型幼生は体サイズが大きく、翌春の池群集において上位捕食者としてトップダウン的に下位の相互作用に影響がある。そこで野外池に設けた網を用いて操作実験を行い、越冬幼生が、翌春に孵化したエゾサンショウウオ幼生(当年幼生)と、カエル幼生の個体数変化と形態変化に与える影響を検討した。結果として、越冬幼生は、捕食を通じて当年幼生とカエル幼生の数を減らすだけでなく、2種の対抗的な形態変化の様式を大きく変化させることを通じて、個体数に影響することが明らかとなった。 一連の研究は、適応的な形態可塑性が個体群動態に果たす役割を明確に示した極めて新規的な成果といえる。
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Research Products
(6 results)