2007 Fiscal Year Annual Research Report
事象知覚の前提となる物体同一性の心的表現に関する認知・脳科学的検討
Project/Area Number |
07J05654
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
河地 庸介 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 事象知覚 / 物体同一性 / 特徴統合 / 通過・反発刺激 |
Research Abstract |
時空間位置の移動にかかわらず、当該物体を同一のものとして知覚する「物体の同一性」を脳内で表現する視覚情報選択・統合過程について、2物体が交差する運動軌道をもつ通過・反発刺激を用いて心理物理学的に検討を行った。この刺激では、2物体が通過、あるいは反発する形で物体の同一性が知覚される。本研究では、物体の運動と表面特徴情報の統合の進行状況を操作するために、2物体に異なる表面特徴を持たせ、交差後の2物体の表面特徴交換の有無、交差後の刺激提示時間を操作した。その結果、特徴交換後150-200msの間刺激が提示され続けなければ、運動と表面特徴が統合されず、安定した通過・反発の知覚判断ができないことが明らかとなった。この結果は、運動速度や表面特徴の種類に依存することなく一定であった。さらに、物体同一性を規定する際の視覚情報の取捨選択方略を検討するために、通過・反発刺激に局所・大域情報をもつ運動物体を用いて、交差後の局所・大域情報交換の有無を操作した実験を行った。その結果、大域情報の交換のみが通過・反発判断に影響を与えた。しかしながら各情報交換に関する検出課題を行ったところ、局所情報の変化は大域情報と同様に知覚されていることが明らかとなった。この結果は、両情報を知覚はできるが、選択的に大域情報を用いている可能性を示唆した。以上より、視覚系は物体同一性を脳内表現する際に、物体の持つ情報のうち大域情報を選択し、情報を統合するという複数の処理プロセスが150-200msという時間範囲の中で機能していることを本研究は示した。
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Research Products
(8 results)