2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05664
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平尾 聡秀 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 移入率 / 環境異質性 / スケール依存性 / 相対種個体数分布 / 中立性 / 分散制限 / 落葉温帯林 |
Research Abstract |
本研究では、生物多様性の中立理論の予測を動物群集で検証することによって、動物群集の種多様性の維持機構を解明することを目的としている。具体的には、昆虫群集と鳥類群集の野外データをもとに、次の3つの課題に取り組んだ。 1.動物群集に中立性が成立しうる時空間スケールの解明 2.環境異質性と生息場所の空間分布が動物群集の動態へ及ぼす影響の解明 3.ニッチと分散制限が食物網構造へ及ぼす影響の解明 今年度は、北海道大学・苫小牧研究林で採集された昆虫群集の相対種個体数データから、中立理論の統計学的なあてはまりを調べた。次に、昆虫・鳥類群集を対象として、群集構成の変動の空間スケール依存性に関するデータ解析を行なった。また、樹木間の距離の異なる植林地を造成し、その樹木上に成立する植食性昆虫群集について、環境異質性と生息場所の空間分布が群集構造に及ぼす影響を解析した。さらに、この植林地で、ニッチと分散制限が植食性昆虫-捕食性昆虫の食物網構造へ及ぼす影響を検討した。 結果として、必ずしも昆虫群集が中立理論から逸脱しないことが明らかになった。また、群集構成の変動が起こる空間スケールは群集を構成する分類群の分散能力と共に増加することを解明した。そして、比較的均質な環境では、生息場所の空間分布が群集構造に大きな影響を及ぼしており、分散制限が食物網の複雑性と強く関係していることを明らかにした。これらの成果は論文として国際誌に発表、または投稿中である。 これらの研究成果から、植物群集に対する既存の知見と同様に、動物群集でも分散制限の効果が群集動態に大きな影響を及ぼし、環境異質性の効果を上回る場合もあることが明らかになった。今後はニッチと分散制限の効果を同時に検討することができるモデルの開発や、中立性の発現に影響を及ぼしうる進化的な制約の検討をすすめることによって、生物多様性の維持機構の理解が進むと考えられる。
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Research Products
(4 results)