2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05670
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮沢 健介 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 失われた10年 / 生産性 / 稼働率 / 高齢化 / 貯蓄率 / 経常収支 / 通商環境 / 貿易置換 |
Research Abstract |
大きな研究目的は日本の長期不況の実物的な要因の解明であり、そのために(1)生産性の分析(2)高齢化と貯蓄の影響の分析、この2つを大きな柱として研究を進めてきた。 まず1つ目の生産性の分析について。日本の長期不況の原因としてTFP成長率の低下が議論されるが、実証上の最大の問題は稼働率の効果をいかに除去するかである。統計が不十分なこともあって通常のTFPの推計では稼働率が考慮されないことが多く、その場合にはTFPに誤差が生じることになる。特に日本の90年代には稼働率の水準が中長期的に低下したといわれており、もしこの効果を無視するとTFPの推計値が実際の値より低くなってしまう。そこで稼働率の統計である経済産業省の稼働率指数の詳細を調べ、その問題点を示した。その上で、先行研究の手法を取り入れながら独自の稼働率推計方法を提示し、実際に稼働率とTFPを推計した。その結果、90年代のTFP成長率低下の一定部分は稼働率低下の効果が混入した結果であり、稼働率を考慮しない推計結果に比べて90年代のTFP成長率が高くなることが分かった。 2つ目の高齢化と貯蓄の影響について。ここでは当初の方針をやや変更し、貯蓄の中でも特に外国貯蓄、つまり経常収支に焦点を当てた。日本は過去30年近く経常収支を計上し続けているが、これは将来の高齢化と貯蓄率の低下に備えた行動だと思われる。しかし90年代に経常収支のGDP比率が低下するという事態が生じた。高齢化の影響とも考えられたが、ここ数年は中国経済の躍進もありまた経常収支は再び上昇傾向にある。国際貿易に関する議論で地域統合やFTAの貿易置換効果が注目されているが、NAFTAやEUの単一市場が日本の貿易(特に輸出)に負の影響を与えたと考えられ、実際に地域別の数量・価格データも整合的になっている。そこで国際モデルを構築し、モデルと整合的な「貿易ショック」を計算し、それがマクロ経済に与えた影響をシミュレーションした。その結果、90年代後半から02年頃までの日本経済の停滞のかなりの部分が貿易ショックによるものだと分かった。
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Research Products
(1 results)