2008 Fiscal Year Annual Research Report
対連合課題の記憶表象固定メカニズムの検証:fMRIによるプロスペクティブスタディ
Project/Area Number |
07J05708
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 謙一郎 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 長期記憶 / 機能的MRI / 前向き研究 / 対連合課題 |
Research Abstract |
本研究は対連合課題を用いて,複数回の学習後event-related fMRI撮像を施行することで,経時的な連合学習の記憶痕跡生成過程の変化を検討するものである.昨年度には名詞を用いて,暴露量を等しくした遠隔記憶表象と近時記憶表象を比較することで,経時的な記憶表象の変化を機能的MRIで観測した.近時記憶表象は海馬に形成されることを予想していたが,これを確認することはできなかった.この結果をもとに今年度はデザインを改良して実験を行った.まず記憶表象を作らせる刺激を名詞から図形へと変更した.また遠隔記憶と近時記憶の学習時の刺激暴露量を等しくしていたものを,遠隔記憶に相当する図形の学習量を,近時記憶に相当する図形に比して過剰にすることとした.これにより想起時(MRI撮像時)の遠隔/近時記憶の成績が等しくなることが期待された.最終的に30人の被験者での実験が終了し,MRI撮像中の遠隔/近時記憶の想起成績に有意差は認めなかった.機能画像では,遠隔記憶/近時記憶ともに有意なMRI信号を得ることができた.具体的には近時記憶表象は海馬に形成され,逆に遠隔記憶表象は外側側頭葉皮質優位に形成されることが判明した.本実験により記憶表象は,時間があまり経過していない時は海馬を含む内側側頭葉に形成されるが,時間が経過した表象は外側側頭葉皮質に形成されることが本実験にて明らかになった.これは動物での海馬破壊実験や,内側側頭葉が損傷された臨床例の逆行性健忘から推定される記憶のconsolidation theoryに合致する所見である.遠隔記憶表象を外側側頭葉に認め,同時に近時記憶表象を海馬に認めるという結果は機能的MRI研究においては初めての知見である.現在解析結果を論文にまとめ海外雑誌への投稿中である.
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Research Products
(3 results)