2008 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類の種子散布行動が植物の繁殖成功に及ぼす影響-野外観察と遺伝解析による解明-
Project/Area Number |
07J05734
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺川 眞理 Hiroshima University, 大学院・国際協力研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 種子散布 / ニホンザル / ヤマモモ / 内果皮遺伝解析 / 採食行動 |
Research Abstract |
本年度は、昨年の樹上果実量の観察個体ゐ樹上にほとんど果実がついておらず、凶作であることが示された。豊作の昨年とは異なり、調査期間にサルはヤマモモを採食しておらず、昨年から継続して行っている種子親候補個体の探索と採集を中心に野外調査を行った。サルの結実木選択に関しては改良を加えて、説明変数として樹上果実量、熟度、季節、変量効果として結実木の個体番号を用いて解析を行い、AICの最も小さなモデルを選択したところ、すべての変数を含むモデルが選択された。いずれの季節も樹上の果実量が多いほど、熟度が高いほど、サルによる訪問確率が増加したが、樹上の果実量が少ない結実木は果実が熟していても結実木ピークである6月上旬には選択されず、全体の果実量が減少する6月下旬に利用されることが示された。また、果肉の栄養分析から果実は熟すにつれて糖度が急増することが示され、サルは遊動域全体の熟果の利用可能量と分布にあわせて、効率よく採食できるように行動を変化させていることが示された。散布種子の遺伝解析から、糞内の散布種子は複数の母樹由来の種子が混在していること、はきだし散布された種子は同時に散布されたものがすべて同じ母樹に由来していることが明らかになった。サルは樹上で頬袋に果実を貯めて、地上で休息時に果肉を食べながら多くの種子を吐き出し一部を飲み込むことで多様な母樹の種子が腸内で混合されると考えられる。一訪問あたり、100個以上の果実を頬袋に貯めることはこれまでの観察で示されており(寺川ら2008;寺川未発表)、今後は1個体を追跡して、散布様式ごとの散布量を定量的に評価することが散布者としての機能を評価するための課題として考えられる。
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Research Products
(4 results)