2008 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯収束帯周辺の大気循環と輸送混合過程に関する研究〜層状構造の果たす役割〜
Project/Area Number |
07J05787
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 成徳 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 熱帯 / 対流圏 / 層状構造 / 水蒸気 / 季節内振動 / 形成過程 |
Research Abstract |
年次計画に従い、平成20年度は「熱帯対流圏中層に見られる湿潤層状構造の中・長期変動に対する応答」及び「熱帯対流圏中層に見られる湿潤層状構造の形成過程」について調べた。 まず、前年に実施した数値実験の結果を用いて、湿潤層状構造と季節内振動(フッデン・ジュリアン振動)やエルニーニョ・ラニーニャとの関係を解析した。季節内振動については北半球夏季に顕著なシグナルが見られたが、それに対応する湿潤層状構造出現率の変化は見られなかった。このことから、湿潤層状構造の出現率は、季節内振動よりも長い時間スケールの構造によって支配されていると考えられる。 次に、多数の湿潤層状構造の形成過程を統計的に分類し、形成過程と背景場との関係について明らかにするために理想化した初期条件・境界条件の下で数値実験を行った。水蒸気の移流方程式に基づく形成過程の分類方法を開発し、270日の長時間データの統計として層状構造形成過程を診断したところ、湿潤空気塊の貫人により形成されている場所(貫入型領域)とシアー流による湿潤空気塊の引倒しによる場所(線形シアー型領域)を識別することができた。線形シアー型領域は緯度・高度に依らず幅広く見られたが、貫入型領域は対流による鉛直混合の少ないところに特に多く見られた。子午面循環の多層構造が明瞭な9月には、対流域から晴天域へのアウトフロー領域の内部で貫入型の層状構造形成過程が卓越していた。
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