2008 Fiscal Year Annual Research Report
アジアゾウElephas maximusを対象とした相対的数量判断と長期記憶研究
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07J05799
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉本 尚子 (入江 尚子) The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アジアゾウ / アフリカゾウ / 相対的数量判断能力 / 総和 / 系統比較 |
Research Abstract |
1.アジアゾウの総和の相対的数量判断能力 20年度には、昨年度の実験に引き続き、さらにアジアゾウの総和(足し算)の相対的数量判断能力について検討した。この実験では上野動物園のメス・アーシャと京都市動物園のメス・美都を被験体とした。アーシャは昨年度までの実験にも参加していたが美都は今回初めての参加となった。本研究結果については国際学会(ISBE2008、後述)で発表し、国内外のメディアでも取り上げられた。さらに現在、学術誌に投稿中である。 2.アフリカゾウの相対的数量判断能力実験 また、これまでの研究で、アジアゾウの相対的数量判断能力が他種と異なる可能性が示された。そこで、20年度は近縁のアフリカゾウでも同能力を検討することで、象の数認識の系統的比較を試みた。この実験は、アジアゾウで行った実験とまったく同じ方法で、2つの空のバケツにそれぞれ異なる数量の報酬を入れていく様子をゾウに見せ、どちらか一方を選択させた。報酬の数は1から8までとした。今回、実験に参加したのは広島安佐動物公園のマルミミゾウ・メイー頭であった。その結果、メイは73.3%の頻度で数の多い方を選択した。したがって数の大小判断はできていたと言える。しかし、ここで注目すべきは、メイの成績に差の効果および総量の効果が見られたことである。アジアゾウとアフリカゾウは約800万年前に分岐したと考えられており、その生息地環境も前者がジャングルなどの森林なのに対し後者はサバンナなどの草原というように大きく異なる。そうしたことから、両者の認知能力に違いがあることはなんら驚くべきことではないが、本実験結果から、アジアゾウは、アフリカゾウや類人猿を含めた他種と異なる数認識をしている可能性が見出されたことは興味深い。ただし本実験では被験体数が1頭だったため、引き続き実験を行う予定である。
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Research Products
(7 results)