2007 Fiscal Year Annual Research Report
強歪み加工による高耐食性ナノ微結晶アルミニウム合金の創製
Project/Area Number |
07J05868
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
孫 仁俊 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 待別研究員(DC2)
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Keywords | 強歪み加工 / Equal-channel Angular pressing / 陽極酸化 / 孔食 / 耐食性 / 内部応力 |
Research Abstract |
近年,強ひずみ加工であるECAP (equal-channel angular pressing)処理によりAlの結晶粒をサブミクロンあるいはナノレベルまで微細化して,強度および延性等の機械的特性を改善することが注目されている。一方,Al合金は,通常,耐食性,硬度等を改善するため陽極酸化(アルマイト処理)を施して使用されることが多い。しかし,陽極酸化したAl合金の耐食性に及ぼすECAP処理の影響については,これまでに報告されていない。そこで本研究では,陽極酸化したAl-Mg合金(AA5052)およびAl-Cu合金(AA2024)の耐孔食性に及ぼすECAP処理の影響を電気化学的手法を用いて調べた。陽極酸化したAl-Mg合金に孔食が発生するまでの時間はECAP処理を行った方が短くなっており,ECAPにより耐孔食性が劣化した。しかし,陽極酸化Al-Mg合金の耐孔食性は,ECAP処理後,焼鈍を行うと温度の上昇に伴いECAP無しの場合と同レベルまで改善された。陽極酸化膜には圧縮の内部応力が残存し,ECAP処理を行うとその内部応力が大きくなることが分かった。陽極酸化膜の圧縮応力は,焼鈍温度が高くなる程減少した。ECAP処理によりAl-Mg合金の内部応力が増加するため,陽極酸化膜の内部応力も増加し,酸化膜にクラックが生じ易くなると考えられる。ECAPを行った陽極酸化Al-Mg合金の耐孔食性が焼鈍により改善されたのは,陽極酸化膜の内部応力が焼鈍により減少したためと考えられる。一方,陽極酸化したAl-Cu合金の耐孔食性はECAP処理により改善されることが分かった。Al-Cu合金には合金元素からなる第2相析出物が存在しているが,この析出物はECAP処理により分断され微細となった。析出物の中でもSiおよびAl-Cu-Si-Fe-Mn系金属間化合物は陽極酸化の際に酸化されず酸化膜中にそのまま存在し,欠陥部を形成していた。陽極酸化したAl-Cu合金の孔食は,この析出物の周辺から開始した。ECAP処理を行なうと析出物が分断され微細になることから,ECAP処理により陽極酸化Al-Cu合金の耐孔食性が改善されたのは孔食の起点になる析出物のサイズが減少したことによるものと考えられる。
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Research Products
(4 results)