2008 Fiscal Year Annual Research Report
グループとインセンティブについての理論および実験研究
Project/Area Number |
07J05879
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
八木 伸行 The University of Tokyo, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 金銭的インセティブと非金銭的インセンティブの関連性 / 不完全モニタリングの繰り返しゲームの実験研究 |
Research Abstract |
"Role of Linking Mechanisms In Multitask Agency with Hidden Information"(松島斉教授、宮崎浩一氏との共著)をJournal of Economic Theory誌からの改定要求を受けて改定作業を行った。この研究は、複数の同質的なエージェントが私的情報を持っ場合に、情報を引き出す、金銭的インセンティブと、グループにおける非金銭的インセンティブの関連性を分析している。標準的なアプローチは、行動に応じて金銭支払い額を変えることで私的情報を引き出すが、Jackson and Sonnenschein(2007)のアプローチは、金銭支払いを用いず、エージェントが選択できる行動を適切に制限することで、近似的に私的情報を引き出せることを示した。我々の研究は、この2つのアプローチの必要十分条件がほぼ一致することを発見し、背後にあるロジックが基本的に同じものであるという洞察を与えた。また、破産制約があり、罰金を科すことに制約がある場合にグループインセンティブを用いることでエージェント達の余剰をほぼ全て獲得できるという望ましい性質があることを示した。 "Repeated Games with Imperfect Monitoring:An Experimental Approach"(松島斉教授、遠山智久氏との共著)の論文の作成を行った。この研究は不完全モニタリングの無限回囚人のジレンマゲームの実験研究であり、主に私的モニタリングと呼ばれる環境での人間の協調行動のメカニズムを分析した。各プレーヤーの行動が相手に正確に伝わらず、また、どのような情報が伝わったかが分からない状況での協調行動は近年、理論的な分析により明らかになってきている。我々の実験研究は、理論的には情報伝達の不確実性が低い場合には協調を維持するために、悪い情報に過剰に反応して相手を罰する行動をとるべきではない、と分析されるにもかかわらず、被験者たちは心理的なバイアスにより過剰反応して協調の機会を損なっている可能性に注目した。通常理論が想定しない、心理的なインセンティブが不確実性下の協調行動に与える影響を分析したものである。この結果を統計的に示すためのデータ分析作業を行った。
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