2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05884
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石山 祥子 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 民俗芸能 / 民俗の近代 |
Research Abstract |
本年度は、前年度から継続しているフィールドワークに加えて、資料調査に重点をおき、近代における黒川能と能楽にかかわる資料の整理や分析にも力を入れた。具体的には、東京文化財研究所や法政大学能楽研究所、山形県立図書館、鶴岡市立図書館などに所蔵されている文献・資料の調査をおこなったが、とりわけ、東京文化財研究所と法政大学に保管されている、1967年に能楽研究者らによって蒐集された1万点以上に及ぶ黒川能関連資料については、未整理のものや利用されていないものも多い。これらの文書資料を分析して使用する意義は、現地調査だけでは知り得ない情報が得られるだけでなく、黒川能あるいは能楽(史)研究の歴史の一端が垣間見える点にあるといえる。今年度は資料点数が膨大であるため、その整理に集中したが、かつての研究者の興味や関心がうかがえる痕跡として、資料の性格を把握し、今後の他の研究者にも使用できるような状態に整備する作業や、未だに利用されていない資料を活用して研究に反映させていくことは、黒川能と能楽の近代における関係の変遷を考える上でも、非常に重要な意味を持つと考えている。また、それらの資料の中から、明治〜昭和期の黒川能の役者の記録を入手できた。聞き取り調査では得られない過去の役者に関わる資料が見つかり、近代以降に黒川能が能楽とは異なる道を歩み、「素人」として峻別されてゆく時代に、黒川能の役者がどのような実践をし、能楽に対してどのような意識を抱いていたのかが明らかになり、黒川能と能楽をめぐる近代初期の歴史的変遷や相互的な影響関係について、それぞれの実践と表象とを視野におさめて検討することができた。
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Research Products
(2 results)