2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07J05884
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石山 祥子 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 民俗芸能 / 民俗文化の近代 / 表象と実践と語り |
Research Abstract |
上記研究課題の最終年度にあたる本年度は、積極的に研究の成果を発表しながら、調査地での意見交換も行い、本研究を意義あるものにするために努めてきた。現地などでのフィールドワークや聞き取り調査に基づいて黒川能の現状把握をするとともに、東京文化財研究所などに所蔵される資料の整理、調査についても前年度に続いて取り組んできた。具体的には、能楽と黒川能との明治から平成にいたるまでの関わりや影響について、黒川能の上演演目の変遷と能楽の復曲ブームとの関連から考察を行った。そこからは、なぜ、黒川能が能楽から「古風」な能とみなされたのか、そして、そのようなイメージが黒川能そのものの実践や語りにいかに作用していたのか、その一端を明らかにすることができた。歴史的な経緯を指摘するだけにとどまらず、現在の黒川能の実践や語りとの関連も視野に入れ、歴史的な背景や文脈のなかに今日の実践や語り、新たな試みを位置付けようとしているところに、本研究の意義があるだろう。また、山形市出身の詩人・真壁仁の思想と実践と黒川能の関わりについても検討した。真壁は黒川能から、また、黒川能は真壁から多くの影響を受け、様々な部分で変容を遂げた。黒川能の紹介者、研究の第一人者という立場にとどまらず、当時の役者の大半と同じ「農民」としての立場から黒川能を見つめ、対話を続けた真壁の生前の活動について、文字資料だけでなく、黒川での聞き取りなどを通じて明らかにすることができた。真壁の思想や、黒川能に対する考え方は、今日の黒川能の実践や表象にも濃厚に影響している。さらに、両者の関係が四十年という長きにわった点も考慮すれば、黒川能と真壁仁の関わりについて論じることによって、黒川能の近代の歴史を描き直すことが可能になるのである。
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Research Products
(1 results)