2008 Fiscal Year Annual Research Report
ポストゲノム時代の挑戦:ABCG2タンパク質の品質管理と小胞体ストレス
Project/Area Number |
07J05897
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中尾 香菜子 (若林 香菜子) Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多剤耐性 / ABCトランスポーター / ABCG2 / 小胞体ストレス / ユビキチン化 / タンパク質品質管理機構 |
Research Abstract |
本研究ではガン細胞における多剤耐性の要因として注目されてきたABCG2を膜タンパク質のモデルとして、糖鎖付加、ジスルフィド結合、ユビキチン化に代表される翻訳後修飾とタンパク質の品質管理、細胞内安定性との関係を解明しそれを制御する分子プローブを設計することを目的としている。2年目となる本年は以下の2点に焦点をあてた。 (1)ABCG2タンパク質における糖鎖付加の意義の検討 糖鎖付加の起こらない変異型ABCG2(N596Q)は、機能の面で野生型とほぼ同程度を示した一方で、その発現量は50%ほどに減少した。またその発現量の減少は、タンパク質分解経路阻害剤により抑制された。免疫蛍光染色による検証を行ったところ、タンパク質分解経路阻害剤によりABCG2(N596Q)の発現量の増加が観察された。よって、ABCG2において糖鎖付加は、タンパク質として成熟か未成熟かを決定するための1つの要因であることが示唆された。 (2)ABCG2タンパク質の品質管理と分解経路機構 ABCG2タンパク質の第3番目の細胞外ループに存在する2つのCys残基は、ABCG2のタンパク質としての安定性を維持する上で重要であり、それらCys残基が欠損すると、分子内S-S結合が形成されないためにタンパク質としての構造が不安定化し、未成熟タンパク質としてユビキチン・プロテアソーム系で分解されてしまうことを前年度に報告した。3種の一塩基多型(Q141K,F208S,S441N)とこの品質管理機構との関連性の検証を行った。SNP変異型ABCG2(F208S,S441N)は、分子内Cys残基が欠損しているABCG2同様、プロテアソーム阻害剤によりタンパク質の発現量は増加し、さらに分解を阻害された変異型ABCG2タンパク質が凝集体として細胞内に観察された。このことから、これら2つの一塩基多型を有するABCG2は、タンパク質としての構造が不安定化されるために発現量が減少し、機能低下につながっていると考えられる。一方、ABCG2(Q141K)は、野生型と比較して発現量が減少しているが、機能の面では野生型と同程度であることが報告されている。ABCG2(Q141K)は、分子内S-S結合が欠損している変異体やF208S,S441Nと同様、プロテアソーム阻害剤によりタンパク質の発現量が増加する一方、もう1つのタンパク質分解経路を阻害するbafilomycinAlを作用させても発現量が増加するという野生型と同様の結果を示した。
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