2009 Fiscal Year Annual Research Report
ポストゲノム時代の挑戦:ABCG2タンパク質の品質管理と小胞体ストレス
Project/Area Number |
07J05897
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中尾 香菜子 (若林 香菜子) Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多剤耐性 / ABCトランスポーター / ABCG2 / 小胞体ストレス / ユビキチン化 / タンパク質品質管理機構 |
Research Abstract |
本研究ではガン細胞における多剤耐性の要因として注目されてきたABCG2を膜タンパク質のモデルとして、糖鎖付加、ジスルフィド結合、ユビキチン化に代表される翻訳後修飾とタンパク質の品質管理、細胞内安定性との関係を解明しそれを制御する分子プローブを設計することを目的としている。最終年度となる本年は以下の2点に焦点をあてた。 (1)ABCG2タンパク質の品質管理と分解経路機構 ABCG2タンパク質の第3番目の細胞外ループに存在する2つのCys残基(Cys592,Cys608)は、ABCG2のタンパク質としての安定性を維持する上で重要である。それらのCys残基が欠損すると、分子内S-S結合が形成されず、タンパク質としての構造が不安定化し、未成熟タンパク質としてユビキチン・プロテアソーム系で分解されてしまう。また実際ヒトからみつかっている2つの一塩基多型(F208S,S441N)でも前述の変異体と同様のメカニズムで分解されるため、発現量減少を引き起こすことも明らかとなった。そこでさらなる検証を行うため、電子顕微鏡法により、細胞内の状態の観察を行った。その結果、プロテアソーム阻害剤MG132処理を行った変異型ABCG2発現細胞では、細胞内にアグリソームと呼ばれる凝集体を観察することができた。さらにABCG2特異的な抗体を用いて、免疫電子顕微鏡法による観察を行ったところ、アグリソーム内にABCG2陽性反応が確認された。 (2)イオントラップ型質量分析器を用いたプロテオーム解析 ABCG2は小胞体内で様々なシャペロンタンパク質の助けを借りてS-S結合形成や糖鎖付加が起こり、高次構造が形成される。また未成熟タンパク質として分解されるか、成熟タンパク質としてゴルジ体へと輸送されるかの選別も小胞体で受けており、その選別にもシャペロンタンパク質が関与しているようである。そこで、イオントラップ型質量分析器を用い、ABCG2と相互作用するシャペロンタンパク質の探索を行った。変異型ABCG2として、S-S結合や糖鎖を欠損する変異体および発現量が減少する一塩基多型を用いている。その結果、変異型に特異的に結合しているシャペロンタンパク質がいくつか検出された。
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