2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子系統解析によるヒゲクジラ類の進化史の研究〜適応放散の解明にむけて〜
Project/Area Number |
07J05970
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
佐々木 剛 The Institute of Statistical Mathematics, モデリング研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 進化生物学 / 分子系統学 / ヒゲクジラ / 核遺伝情報 / 生物多様性 / 最尤系統解析 |
Research Abstract |
本年度は大量のミトコンドリアゲノムデータを用いた最尤系統解析法の探索とベンチワークによる核遺伝子データの収集に努めた。ウェブデータベースよりヒゲクジラ類の核遺伝子配列を入手し,ナガスクジラ科7種+セミクジラ科1種のゲノムDNAからPCR法により遺伝子の増幅を試みた。その結果,RAG1,RAG2,APP,IRBP,CNR1,EDG1の6遺伝子の増幅に成功し塩基配列を決定した。決定できた塩基配列はトータルで約4kbとなった。これらの遺伝子座を連結した配列で分子系統解析を行ったところミトコンドリアゲノムの分子系統解析(Sasaki et al.,2005,Syst.Biol.54:77-90)で示唆された3リネージの単系統性が核遺伝子の解析でも改めて支持された。しかしながらシロナガスクジラ+ニタリクジラ+イワシクジラで構成されるリネージの系統関係はミトコンドリアが(シロナガス(ニタリ,イワシ))であったのに対し核遺伝子は(ニタリ(シロナガス,イワシ))となった。この相違に関しては今後さらに核遺伝子の情報を増やして解析しより詳細に分析していく必要がある。実験的データ収集と共に大量遺伝子配列を用いた分子系統解析法の準備も行った。具体的には以前に共同研究で行ったコイ科魚類のミトコンドリアゲノムを用いた系統解析をテストケースにした最尤系統構築法の確立である。この系統解析では数十種のミトコンドリアDNA全長配列を用いており統計計算で処理する量はかつてヒゲクジラ類ミトコンドリア系統解析で行ったそれとは比にならないほど膨大である。ここで私は遺伝子毎の系統構築と各系統樹で得られた尤度の総合評価による系統解析を行う。この方法により既存の配列連結法による系統構築よりもより信頼性の高い系統関係が得られると期待される。
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Research Products
(2 results)