2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子系統解析によるヒゲクジラ類の進化史の研究~適応放散の解明にむけて~
Project/Area Number |
07J05970
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Research Institution | The Institute of Statistical Mathematics |
Principal Investigator |
佐々木 剛 The Institute of Statistical Mathematics, モデリング研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 進化生物学 / 分子系統学 / クジラ目 / 核DNA / 生物多様性 / 分子分岐年代 |
Research Abstract |
本研究はこれまで謎とされてきた中新世中期におけるナガスクジラ科+コククジラ科を中心とした適応放散の進化史について大量の遺伝子配列の分子系統解析を行い明らかにすることを目的とし、本年度はこれまでの成果をまとめ論文作成に至ることを心がけて研究を実施した。前年度に引き続きより多くの核遺伝子座を単離するべく候補遺伝子座(ADORA3,ADRB2,BDNF,ZFY,vWF,BRCA A2AB,ATP7A)でPCRによる実験を行った。実験の結果、研究対象としたヒゲクジラ類8種のうち一部の種では増幅が確認できたが、全種からの単離は非常に困難であることがわかった。また、ゲノムデータベースから新たに10個の核遺伝子配列を入手し遺伝子配列データ5314bpとさらにミトコンドリアタンパクコード遺伝子10894bpを解析に加えトータル17772bpの遺伝子配列に基づきナガスクジラ科の分子系統解析を行った。その結果、ナガスとザトウの系統2とシロナガス(ニタリ、イワシ)の系統3が姉妹群関係となり90%以上の統計検定値で強く支持された。この系統関係は中新世中期におけるナガスクジラ類の進化を示す興味深い発見といえる。ナガスクジラ科3系統の分子分岐年代を推定したどころ、ミンク系統1がおよそ2300万年前にナガスクジラ科の中で最初に分岐し、それから間もなく系統2と3がおよそ2100万年前に分岐したと推定された。本研究の分子系統解析はこれまで謎とされてきたナガスクジラ科内の系統進化に新たな知見をもたらすと期待される。
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Research Products
(2 results)