2008 Fiscal Year Annual Research Report
磁性分子内の磁気的相互作用を考慮した物性値及び応答量の計算法の開発とその解析
Project/Area Number |
07J06154
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉澤 輝高 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 分子磁化率 / スピン-軌道相互作用 / 相対論効果 / 電子相関効果 |
Research Abstract |
分子中の個々の電子スピンはスピン-軌道(SO)相互作用や2電子スピン-スピン(SS)相互作用によって空間軌道や他のスピンと結合しているため、低い温度では交流磁場に対して全電子スピンが磁石のように振る舞う分子がある。このような磁性分子を化学的に解析・設計するためには、分子中の磁気現象を量子化学的に扱う基礎理論の構築が望まれる。そこで以下を目的とする。(I)物性値計算における相対論効果及び電子相関効果の検討、(II)温度及び交流磁場の周波数に依存する磁化率を計算するプログラムを開発し、どのような分子構造、原子種をもつ分子がより高い温度で単分子磁石になるのかを解析する。 本年度の結果は以下の通りである。まず相対論(2次Douglas-Kroll-Hess法)と電子相関(MP2法)の両方を考慮して分子磁化率を計算できるようにプログラムを改良した。精度確認の希ガスの計算では、相対論効果に電子相関効果を加えることでさらに実験値に近い結果を得た。次に、14族から17族までの第2周期から第5周期までの水素化物の分子磁化率を系統的に計算した。得られた周期表を横断及び縦断する傾向は、既存の原理で説明できることを示した。但し、水素化物の相対論効果は非相対論値の3%以下であった。次に、ヨウ素化合物と臭素化合物で、分子磁化率における電気陰性度と相対論効果の関係を調査した。IH→IN→ICl→IFと重原子Iに結合する原子の電気陰性度を上げると、分子磁化率のSO効果は増加した。この結果はSO相互作用を人工的に制御するには重要である。最後に、3重項分子SbHの分子磁化率計算でSO相互作用と電子相関効果の有効な相乗効果が得られた。 以上の計算結果をまとめ、J.Comput.Chem.に投稿した。
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Research Products
(3 results)