2007 Fiscal Year Annual Research Report
温度変化に起因する不安定状態下の木材の力学物性とその機構解明
Project/Area Number |
07J06166
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
王 悦 Kyoto Prefectural University, 農学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 木材の物性 / 不安定状態 / 温度変化 |
Research Abstract |
本研究は、急激な状態変化による木材の力学的性質の変化、すなわち木材の不安定化とその機構解明を試みたものである。今までの研究結果によると、不安定化の発生に直接かかわる要因として、不安定状態の材と安定状態の材では分子の位置或いは運動エネルギーに変化を生じ、運動性に違いを生じることが考えられる。そこで、19年度には、不安定状態の発生した木材の吸着サイトと吸着水分子によって構成される系の電子、分子運動性の違いについて、^1H NMR法によるスピン-スピン緩和時間の測定、誘電法による界面分極の変化から検討した。 誘電測定法を援用し、実質と吸着水界面に発生する界面分極挙動について、正常材と脱リグニン処理材を用いて実質と吸着水界面の運動性について検討した。その結果、分極の生じる周波数が、不安定材で高周波数側にシフトすること、急冷後の時間経過で安定材のそれに近づく変化を示し、不安定材の場合分極が生じやすい状態に変化していること、この変化は脱リグニン処理材の高周波数側への移動と一致し、リグニン構造、成分の変化が大きく起因していることが明らかになった。 また、^1H NMR法を導入して、吸着水の電子スピン運動について緩和時間の変化から検討を加えた。その結果、急冷処理によって緩和時間は一旦小さくなり、時間とともに正常材のそれに近づく変化を生じ、吸着水自身においても不安定化によって運動が容易に可能なエネルギー状態にあることが明らかとなった。 以上の結果を総合して、不安定化を引き起こしている微細構造上の影響因子は、マトリックス中の化学成分、その構造とそこに存在する吸着水が主因である。すなわち、不安定化は、吸着水分量に大きく支配され、水分子の位置ならびに運動エネルギー変化に基づく再分配に起因し、マトリックス構造中の、特にリグニン成分の凝集構造と水分子の位置変化の難易が大きくかかわったものといえる。
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Research Products
(3 results)