2007 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀における新聞のドイツ語-そのミクロ構造に関する社会語用論的研究
Project/Area Number |
07J06263
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
細川 裕史 Gakushuin University, 文学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会語用論 / 19世紀 / 言語意織 / 新聞のドイツ語 / 話しことば / Arthur Schopenhauer / ジャーナリスト / 教養市民の言語 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀における新聞のドイツ語のミクロ構造(統語や語彙)のみならず同時代人の言語意識も調査することで、現在ドイツ語圏で注目を集めている社会語用論的なドイツ語史記述を試みている。Hans Eggers(1977)およびPeter von Polenz(1999)では、19世紀に教養層と非教養層という新たな社会階層が生まれ、教養層の主導によって統一的な書きことばが成立していく一方で、新聞によって書きことばが非教養層にも普及し話しことばに接近したことが指摘されている。書きことばの非教養層への普及は、当時の識字率および新聞発行部数に関する統計によって確認できる。新聞メディアの非教養層への接近は、19世紀にHeinrich Wuttke(1875)ですでに指摘されている。こうした社会背景を踏まえ、Arthur Schopenhauerが「新聞のドイツ語」という蔑称をつくった遺稿(1896)を調査した。彼は「新聞のドイツ語」のミクロ構造の特徴として、話しことば的な挿入句の多用など古典派作家の言語に親しんでいた教養層になじみのない言語使用を挙げている。このことから、Polenzが「教養市民の言語」を特定の言語体系ではなくむしろ言語意識としたように、「新聞のドイツ語」もまた特定の言語意識をさすものであり、新聞の言語を非教養層の言語とみなす言語意識がSchopenhauerによる言語批判の背景にあると考えられる。また、Grimmの辞書では「新聞の言語」は「ジャーナリストの言語」とされているが、Gustav Freytagの"Die Journalisten"(1852)を元に調査した結果、新聞は読み聞かせられるものでありジャーナリストは読みやすさを考慮して記事を書いていた、と同時代人が認識していたことが分かった。この言語意識もまた、新聞の言語の話しことば化を示す傍証と考えられる。
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Research Products
(2 results)