2008 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀における新聞のドイツ語-そのミクロ構造に関する社会語用論的研究
Project/Area Number |
07J06263
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
細川 裕史 Gakushuin University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ドイツ語 / 社会語用論的語史研究 / 新聞 / 19世紀 / 言語意識 |
Research Abstract |
Cherubim(1984)などに端を発し、1980年代から注目を集めてきた社会語用論的語史研究は、現在のドイツ語史研究の中心的な分野である。この分野の特徴は、言語の歴史を社会史の一部としてとらえ、言語外現象の変遷をも含めて言語の歴史を扱う、という点にある。Mattheier(1998)によれば、この分野で扱われる「外的語史」(言語と密接に関わりをもつ言語外現象の変遷)の中でも、とりわけ言語意識に関する研究は、いまだに不十分であるという。そこで、19世紀中期に活動した言語批評家、ジャーナリスト、新聞読者の言語意識を調査した。この結果、当時、古典派作家の言語のように高い教養が要求される言語が新聞にも求められている一方で、ジャーナリストの中には、教養のない読者でも容易に読める単純な文体を用いるべきとする新しい言語規範意識も芽生えていたこと、しかし、大衆向けとされる娯楽紙の読者たちは教養層へのあこがれから単純な文体を嫌い、装飾的な文体を好んでいたことが確認できた。このような言語意識が実際の言語使用にどのように反映されているのかを考察するために、1848年の三月革命前後に刊行された新聞の報道記事をもとにサンプル調査を行い、文構造の差異を考察した。その結果、当時の大衆向け娯楽紙も教養人向け娯楽紙も、古典派作家の言語とよく似た複雑な文構造をしていたことがわかった。しかし、大衆向け娯楽紙をその後5年ごとに通時的に調査していった結果、ルポルタージュふうの報道記事は文構造が単純化していく一方で、そのような記事の掲載率は減り、クラスター構造をもつより近代的なニュース記事が掲載されるようになった。このような記事の文構造は、大衆向けの記事でありながら、教養が求められるとされた古典派作家の言語よりも複雑な文構造をもっていた。
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Research Products
(6 results)