2008 Fiscal Year Annual Research Report
秩序無秩序相制御による室温強磁性酸化物半導体の開発とスピントロニクスへの展開
Project/Area Number |
07J06281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北條 元 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 酸化物磁性体 / スピントロニクス / 透過型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究では、酸化物磁性半導体のスピントロニクス材料としての可能性を示すことを目的として、電気伝導を示す磁性体としてFeTiO3-Fe2O3固溶体に注目している。FeTiO3-Fe2O3固溶体はコランダムベースの結晶構造を有し、秩序相(c軸方向にFeとFe+Ti層が交互に積層)と無秩序相(FeとTiがランダムに分布)が存在する。固溶体の磁気的性質はカチオン配列を含めた微構造に大きく依存し、秩序相のみがフェリ磁性を示す半導体となることが知られている。これまでにパルスレーザー堆積法を用いて、室温以上でフェリ磁性を示す固溶体秩序相薄膜の作製に成功し、その電気的および磁気的性質について報告してきた。今年度はこれら固溶体薄膜について、(走査)透過型電子顕微鏡((S)TEM)を用いて微構造を観察し、磁気的性質との関係を調べた。 X線回折(XRD)測定から秩序相であることが確認されたxFeTiO3-(1-x)Fe2O3(モル比:x=0.6,0.8)について、高角度環状暗視野(HAADF)観察を行ったところ、c軸方向にシグナルの振動が見られ、秩序構造を直接観察することが可能であることが示された。 一方で、XRD測定では無秩序相と思われた薄膜も、磁化の値は小さいながらもフェリ磁性的挙動を示すことが知られていたが、その微細構造は明らかにはされていなかった。そのため、その試料についてもTEM観察を行った。まず、暗視野TEM観察の結果から、その試料は10nm程度の秩序相粒が無秩序相マトリックス中に分散した構造であることが確認された。その秩序相粒についてHAADF観察をおこなったところ、その秩序度合は、秩序相薄膜における秩序度合と同程度であることが確認された。さらに、秩序の周期が入れ替わっている逆位相粒の存在も確認され、その逆位相境界の位置、および逆位相境界におけるカチオン配列を原子レベルで決定することが可能であることも示された。
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Research Products
(4 results)