2007 Fiscal Year Annual Research Report
堺本枕草子を中心とした『枕草子』の生成・編纂・享受の研究
Project/Area Number |
07J06330
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山中 悠希 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 枕草子 / 堺本 / 異本生成 / 類纂 / 院政期・鎌倉時代 |
Research Abstract |
これまでの『枕草子』研究において、堺本は後世の改作本であると一般的に認識され、詳細な分析はされてこなかった。しかし、『枕草子』の諸本の問題は『枕草子』自体のありかたの問題、『枕草子』の読者と享受の問題などときわめて密接に絡んでいる。 我々が通常堺本を「類纂本」と認識する際には、個別の記事を集めて作られた本という意味で、記事を区切って捉えることに疑問を持ちにくいと思われる。とくに前田家本の場合は記事の分類と配列に集成的な傾向が強く認められた。しかしながら、堺本を検討した結果、堺本の後半部における随想群では、記事の切れ目を意識させないような効果をもたらす表現・配列の工夫が確認できた。堺本の随想群はゆるやかな連続性を帯びながらまとまっているのである。つまり、堺本の随想群の構成は、章段という単位を越えて、各々の記事が強く結びつきあった複合体として捉えられてくるものであることが明らかになった。堺本の随想群を章段という細切れの単位で認識し、その集合体としての章段群と捉えるだけでは不十分だったのである。本研究では、従来の研究史における「類纂本」のおさえ方の問題点、ならびに『枕草子』の「章段分け」のはらむ問題点を整理・確認しながら、「類纂」という言葉では説明しきれない堺本の緻密な編纂のありようについて検討し、堺本の「再構成」への志向を明らかにした。これによって、平安末期から鎌倉初期の一連の時代的・文化的背景をうけたものとしては比較的早い段階で発生した、達成度の高い「再構成本」として、堺本を捉えなおし、文化史のなかに位置づけることが可能であることを提案した。
|
Research Products
(2 results)