2007 Fiscal Year Annual Research Report
ソ連社会における文学・宗教思想受容と作家の創作活動-M.ブルガーコフを中心に
Project/Area Number |
07J06356
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
梅津 雅子 (大森 雅子) Tokyo University of Foreign Studies, 外国語学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ミハイル・ブルガーコフ / 文学場 / 反宗教プロパガンダ / ウラジーミル・ソロヴィヨフ / 宗教思想 / ニコライ・ゴーゴリ |
Research Abstract |
本研究の目的は、ミハイル・ブルガーコフが創作活動を行った1920年代から30年代ソ連社会の「文学場」を分析することによって、ブルガーコフの主要作品における創作意図を明らかにすることにある。平成19年度はまず、1920年代の「文学場」の中でもブルガーコフにとって特に重要な要素である反宗教プロパガンダに関して研究を進めた。ロシア国立図書館とロシア国立公共歴史図書館において、1920年代のソ連で多数出版されていた反宗教プロパガンダ雑誌や当時のキリスト教研究に関連する資料を収集した。そして、反宗教プロパガンダ雑誌が、いかにブルガーコフの諸作品の形成に関わったかという点について日本ロシア文学会で報告し、論文「ミハイル・ブルガーコフと1920年代ソ連の反宗教プロパガンダ雑誌」にまとめた。また『巨匠とマルガリータ』(1928-1940)について、反宗教プロパガンダの言説でも取り上げられていた善悪二元論に焦点を絞って、宗教思想家ウラジーミル・ソロヴィヨフの思想との比較研究を行い、ロシア語で論文をまとめた。さらに、戯曲『死せる魂』(ニコライ・ゴーゴリ原作)(1930-1931)について、1920年代後半から30年代初頭のソ連社会と文化におけるゴーゴリ受容の実体を整理し、戯曲のテキストとゴーゴリに纏わる当時の芸術作品や批評的言説との比較分析を通してブルガーコフの創作意図を考察した。そして、従来のブルガーコフ研究において神話化されていた作家像を再考すべく、戯曲上演前後のブルガーコフの創作行為を詳細に検討し、社会的存在としての劇作家の姿を明らかにした。尚、このテーマに関してはモスクワ芸術座博物館のアーカイブで貴重な資料を閲覧し、研究に生かすことができた。この研究成果を、論文「ブルガーコフとゴーゴリ-1920年代後半〜30年代初頭ソ連の社会的・文化的コンテクストにおける戯曲『死せる魂』」にまとめた。
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Research Products
(4 results)