2008 Fiscal Year Annual Research Report
腸内環境因子による腸管出血性大腸菌の病原性遺伝子の発現制御解析
Project/Area Number |
07J06381
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 典子 Osaka University, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 病原性 / 短鎖脂肪酸塩 / 酪酸塩 / 腸内常在菌 / 発現調節 |
Research Abstract |
腸管出血性大腸菌EHEC(0157:H7に代表される)の感染成立には多数の病原性遺伝子の協調的な発現が必要である。本研究の目的は、腸管内環境を認識し応答する制御系を分子レベルで解明することである。ヒトの腸内環境は低酸素濃度であり、さらに腸内フローラや宿主因子により変化しており、0157の病原性発現に大きな影響を与えていると考えられる。前年度の結果より、0157の付着に重要なLEE病原性領域の遺伝子群の発現が腸内常在菌の代謝産物である酪酸によって促進されることが明らかとなった。本年度は酪酸塩によるLEE遺伝子群の発現誘導のメカニズムの解明を目的とした。酪酸塩によるLEE遺伝子群の発現には、pchA遺伝子と1er遺伝子が必須であり、これらの遺伝子は酪酸塩により転写活性化された。非病原性大腸菌K12株にpchA遺伝子を導入したところ、酪酸塩に応答して1erプロモーター活性が上昇した。このことから、酪酸塩は0157とK12株に共通の分子機構により感知され、0157のpchA遺伝子及び1er遺伝子の発現調節を介してLEE遺伝子群の発現を上昇させると考えられた。酪酸塩によるLEE遺伝子発現誘導に関与する0157とK12株に共通の分子をDNAマイクアレイ解析から検索した結果、Lrp(leucine-responsive regulatory protein)を見出した。さらに、Lrpのligand(luecine)結合ドメインが酪酸塩の応答に必須であることを明らかにした。このことから、Lrpが酪酸塩のセンサーとして働いていることを示唆された。
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Research Products
(3 results)