2008 Fiscal Year Annual Research Report
女性ホームレスをつくり出す社会-貧困と路上生活の国際比較を視野に入れて
Project/Area Number |
07J06392
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
丸山 里美 Toyo University, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 貧困 / 女性 / ホームレス / シティズンシップ |
Research Abstract |
本研究の目的は、女性ホームレスの貧困の実態を把握し、それを基点に新たな福祉国家のあり方を構想することである。 路上生活者のうち女性は3%しかいないことが示すように、男性と女性とでは貧困の表出過程が異なる。女性ホームレスへのインタビュー調査から、女性がホームレスに至る要因には、パート労働やDVなど、女性の従属的な社会位置が大きく反映された特徴的なものであり、従来の男性労働者を中心とした研究枠組みではとらえきれないことがわかった。 日本の場合とは異なり、欧米の先進諸国では、ホームレスのうち女性の割合は3割を超えている。今年度前半はイギリス・ラフバラ大学で在外研究を行い、日英の違いを検討した。最大の理由はホームレスの定義が異なることで、日本ではホームレスは路上生活者のみを指す概念であるのに対し、イギリスでは家がない人を広く指す概念で、施設に滞在する傾向のある女性がそこに多く含まれている。路上生活者はイギリスでは2000年代に入って激減しているが、その女性の割合は日本と大差がないことがわかった。 またラフバラ大学では、ルース・リスター教授の受け入れのもと、フェミニズム・シティズンシップ論について検討を行った。市民の義務と権利とに着目するシティズンシップ論は、再分配の基礎にある社会的公正とは何かを理論的に問い直すアプローチとして、注目が集まっている。歴史的に女性が市民としての権利から排除されてきた現実を見据え、女性が私的領域で負担してきたケアを社会関係の基礎に据えようとするリスター教授のアプローチは、これまで調査研究を進めてきた日本の貧困女性の実態に立脚しながら、望ましい福祉制度について構想するときに有効である。
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Research Products
(1 results)