2008 Fiscal Year Annual Research Report
2次元三角格子Mott絶縁体の基底状態に関する熱的研究
Project/Area Number |
07J06416
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山下 智史 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 強相関 / 有機導体 / スピン液体 / フラストレーション / 反強磁性 |
Research Abstract |
本年度は、主として低温熱容量測定を用いたEtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2におけるスピン液体状態の検証と昨年度に合成経路を検討したκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の水素体および重水素体の合成を中心に行った。EtMe_3Sb[Pd(dmit)_2]_2は、ダイマーMott型の2次元三角格子を形成し、低温でスピン液体状態の実現が指摘可能性されている電荷移動錯体である。単結晶試料を用いた100mK〜8Kの範囲での低温熱容量測定の結果、スピン液体状態の実現を意味する20〜30mJ/K^<-2>kmol^<-1>の係数を持つ温度の1乗に比例する項(T-linear項)と3.2K付近に古典的スピン状態から量子スピン液体状態へのクロスオーバー現象を示唆するブロードな熱異常を観測した。これらの特徴は、本研究の主たる研究対象であるκ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3と定性的に同じであり、本物質においても、確かにスピン液体状態が実現していることが確認された。定量的な観点では、クロスオーバー現象の特徴的な温度とT-linear項の係数の絶対値について、2つの物質間で有意な差が確認された。これらは、2つの物質間に存在する三角格子の重なり積分のこと比や絶対値がスピン液体状態の励起構造を特徴づける要因の一部であるを示唆している。これらは、スピン液体状態の励起構造の解明において重要な実験事実と言える。κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の試料合成は、それぞれ水素体および重水素体のBEDT-TTFをドナーとした電解合成によって行った。それぞれの試料について複数個のセルを用いて、結晶を約90日間成長させた結果、熱容量測定を行うためには十分な大きさの結晶を得ることができた。これにより、κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3における重水素置換効果の検証が可能となった。
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Research Products
(9 results)