2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世アイスランド社会と王権-ノルウェー王との関係を軸として-
Project/Area Number |
07J06447
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 涼 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中世史 / 北欧史 / アイスランド:ノルウェー / サガ / 王権 / 王権理念 / 戴冠儀礼 / 君主鑑 |
Research Abstract |
アイスランド内部の社会変容に焦点を絞った前年度までの考察に引き続き、現在は、当地を取り巻く多様な関係の中でその社会変容を理解すべく考察を進めている。H20年度は特に、13世紀ノルウェー王権の置かれた状況とその統治理念の発展過程の把握に取り組んだ。 1130年頃から約一世紀続いた内乱期を経て、13世紀に王国統合に向かう中世ノルウェー史においては、大別して二種の王権理念が想定される。ひとつは主に13世紀半ばまでに書かれたサガ中に現れる、神話時代から12世紀末頃までの王権像=「同輩中の第一人者」であり、他方は1250-60年頃にノルウェー宮廷で書かれた教訓的著作『王の鑑』に最も端的に表される、キリスト教的君主理念に基づいた「正しき王」である。前者が王の血統と集会における人々の承認を王位の根拠とするのに対し、後者は嫡出長子による世襲相続、地上における代理人としての神による召命を重視する。 従来は、ホーコン・ホーコンソン王治世半ばの1240年代が王権像の転換期とみなされてきた。しかし、神による召命という理念のひとつの指標である聖別戴冠儀礼のノルウェーにおける発展過程を追跡すると、1247年のホーコン王、1261年の息子マグヌス王の戴冠時点においても、戴冠が王位の必須条件となることはない。そのことから、13世紀半ばのノルウェー宮廷においてキリスト教的君主理念の流行はみられたにせよ、現実には、王の支配の正当性は依然として大幅に血統と集会に基づいていたと考えられる。
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Research Products
(3 results)