2008 Fiscal Year Annual Research Report
5配位状態のリンおよびケイ素からなる新規な結合の構築とその性質の解明
Project/Area Number |
07J06461
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三宅 秀明 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 5配位 / リン / ケイ素 / シリカート / ジシラン / 還元反応 / 6配位 / 超原子価 |
Research Abstract |
この研究の目的は、5配位リン原子および5配位ケイ素原子からなる結合を有する化合物を合成し、その新規な結合を有する化合物の物性や反応性を解明することである。 前年度において合成に成功した5配位ケイ素原子同士が結合した初めてのジアニオン性化合物、ジシリカートの性質について検討を行った。得られたジシリカートに塩酸を作用させたところ、ケイ素-ケイ素結合を保ったままプロトン化か進行し、電気的に中性なジシランが得られた。得られたジシランのX線結晶構造解析により、ヒドロキシ基の配位を受けた5配位ケイ素原子同士が結合していることを確認できた。また、そのケイ素原子の配位状態はジアニオン性のジシリカートと比べると大きく変化しており、この構造の変化に伴ってUV吸収スペクトルが大きく変化することを見出した。また、ジシランに水素化リチウムを作用させて脱プロトン化し、ジシリカートに戻すことにも成功した。すなわち、ジシリカートとジシランは酸塩基反応によって可逆的に相互変換することができ、それによって構造や光学的性質をスイッチングできるということを明らかにした。これは基礎化学的に興味深いだけでなく、各種分子デバイスへの応用も期待される知見である。 シランやその等電子体であるホスホニウム塩の2電子還元反応を検討し、目的化合物の有用な合成中間体と成り得る、ジアニオンケイ素化学種およびモノアニオンリン化学種の発生・捕捉に成功した。この方法の開発により、目的化合物の前駆体の選択肢が大きく広がった。この手法を応用し、新規なアニオン性6配位リン化合物の合成にも成功した。得られた化合物は6配位リン上に2つの水素原子を有しており、従来の方法では合成が困難であった興味深い化学種である。この方法は高配位超原子価化合物全般に幅広く適用可能と考えられ、これまでにない画期的な化合物の合成につながる可能性もある。
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Research Products
(5 results)