2007 Fiscal Year Annual Research Report
機能性ユビキノンプローブの合成と光親和性標識法に基づく標的膜タンパク質の解析
Project/Area Number |
07J06470
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村井 正俊 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光親和性標識法 / 複合体-I / ユビキノン / アセトゲニン / ミトコンドリア / ND1サブユニット |
Research Abstract |
ミトコンドリア電子伝達酵素であるNADH-ユビキノン酸化還元酵素(複合体-I)は、ユビキノンを基質とする酸化還元酵素の中でも極めて重要なエネルギー変換酵素である。分子量1MDa、総サブユニット数45の巨大膜タンパク質である複合体-Iは、パーキンソン病に代表される各種神経性疾患との因果関係が指摘されながらも、その複雑さゆえに基礎研究が最も遅れている呼吸鎖酵素の一つである。H19年度は、複合体-Iのユビキノン還元部位に関する情報を得るため、特異的阻害剤であるアセトゲニンを鋳型とした光親和性標識プローブ([125I]TDA)を合成し、ウシ心筋ミトコンドリアに対して光親和性標識実験を実施した。その結果、[125I]TDAの持つ放射活性の殆どが30kDaのタンパク質に特異的に導入される事が判明した。各種電気泳動法・免疫化学的手法を駆使して標識タンパク質の解析を進めた結果、ミトコンドリアゲノム由来のタンパク質であり、複合体-Iの膜貫通領域を構成するND1サブユニットを標識タンパク質として同定した。この実験事実は、ND1サブユニットが阻害剤の結合部位を構成し、ユビキノン還元反応において中心的な役割を果たしている事を証明する結果と言える。ND1サブユニットは先に記した各種神経性疾患における遺伝子変異が集中する部位であり、その重要性は従来からも示唆されていたが、ユビキノン還元反応への寄与を示す決定的な実験事実は報告されていなかった。本研究による成果はユビキノン還元反応におけるND1サブユニットの寄与を最も直接的に示す初めての実験事実であり、生物有機化学によるアプローチが極めて有効な研究手法である事を改めて証明する結果と言える。
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Research Products
(5 results)