2008 Fiscal Year Annual Research Report
花の適応進化の遺伝的背景:アブラナ科植物を用いたエコゲノミクス
Project/Area Number |
07J06512
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森長 真一 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | アブラナ科植物 / 繁殖様式 / 適応進化 / ゲノム基盤 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
植物は、高地環境へ進出に伴って、花や繁殖器官への投資を増大化させる傾向にある。本研究ではこのような高地環境への適応を担うゲノム基盤の解析を行っている。 ハクサンハタザオは、モデル植物シロイヌナズナに最も近縁な系統の一つであり、日本の伊吹山においては、ハクサンハタザオだけでなく、ハクサンハタザオから二次的に進化した高地生態型であるイブキハタザオもみられ、花や繁殖器官への投資が増大していると予想される。 そこで、伊吹山において両生態型の標高に沿った分布と表現型変異を調査したところ、標高に沿って分布が明瞭に入れ替わることが分かった。低地においてはハクサンハタザオが生育し、標高900m付近を越えるあたりからイブキハタザオがみられるようになり、中間型個体も少数みられた。また、形態形質の表現型変異を解析した結果、高標高ほど繁殖器官への投資が増えることも分かった。 さらに、マイクロサテライトマーカーを用いて伊吹山集団内の遺伝的構造を解析したところ、山の上と下で遺伝子流動がある程度制限されていることが分かった。また、ハクサンハタザオとイブキハタザオのそれぞれを父親と母親にして掛け合わせを行なったところ、種子は正常に成熟し、発芽を行なうことも分かった。これらの結果から、ハクサンハタザオとイブキハタザオには地理的・季節的な要因による交配前隔離か雑種に対する強い自然選択が働いていることが示唆された。 そこで、近縁種であるシロイヌナズナで開発されたマイクロアレイを用いて、網羅的なゲノム多型解析をおこなった。その結果、ハクサンハタザオとイブキハタザオの違いが、全ゲノム領域の非常にわずかな部分に依拠していることが分かった。
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