2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代的アメリカ映画の視聴覚的様式分析-表象技術と文化形態に関するイメージ論的研究
Project/Area Number |
07J06636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中路 武士 The University of Tokyo, 大学院・学際情報学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 映画研究 / 情報学 / 表象文化論 / メディア論 / イメージ分析 / 記憶痕跡 / テクノロジー / アーカイヴ |
Research Abstract |
本研究では、米欧を中心とした現代的映画、視聴覚メディアのイメージ分析を通して、表象技術とともに組み立てられてきた近代文化に関する批判的な考察を行った。ここでは、映画的イメージを運動と時間の技術的エクリチュールとして捉え(グラマトロジー)、その痕跡が形成する記憶の保存体系を視聴覚アーカイヴとして分析した(アルケオロジー)。特に、映画メディアにおけるデジタルテクノロジーとイメージの相互関係に焦点を当てることで、技術的に書き換えられる知覚や記憶、情動や思考の構造の変化の解明を試みた。メディアテクストの分析にあたっては、AV機器やPC機器を基盤に、視聴覚イメージのアーカイヴ構築研究へ向けたシステム設計を行い、その具体的実践のために映像メディア分析ソフト「タイムラインLignes de temps」(仏ポンピドゥーセンターIRI)を用いた。これは、映画の非線形的な読解とその可視化、アノテーションの付与、メタデータの共有などを可能とし、デジタルテクノロジーを批評の道具として反省的に使用したイメージ分析の方法論の提示として有意義な位置づけを獲得しうるものである。映像と音響を機械によって情報学的に書き取り、微細な分析と批評を人文学的に展開することで、映画研究に新たな学際的知見を導入する可能性を見出すことができた。そして、このような研究を実施するために、現代哲学や映画理論、情報科学や認知科学などの図書の批判的読解の蓄積を行うとともに、表象文化やメディアを分析する研究会の組織化やシンポジウムの企画運営、映画祭の映像監修などに携わった。この研究活動は、現代における映像メディアや視覚文化の批判的な理解のために極めて重要な試みであった。今後、これらの研究成果を書籍の出版や論文の作成によって一般に公開する予定であり、そのための基盤となる研究を進展させることができた。
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