Research Abstract |
ラオス南部の農村部では,タイ肝吸虫感染への高い感染率が公衆衛生上の問題となっている.しかしながら,これまでラオスでは,タイ肝吸虫感染に対する予防プログラムが十分に開発されてきていない.そこで,本研究では,これまでラオスやタイで実施されてきた,タイ肝吸虫感染に関する研究や予防プログラムの成果と課題について情報を収集し,対象地域の住民のタイ肝吸虫感染に関する予防知識,健康問題に関する意識やニーズなどの把握を行い,感染の危険性の高い魚種(リスクフィッシュ)を同定することを通して,効果的なタイ肝吸虫感染に対する予防プログラムを開発することを目的とし,以下の4つの調査および活動を実施した. ・ラオスおよびタイの国際機関,教育省・保健省,大学,JICA事務所NGO等を訪問し,これまで両国が実施してきたタイ肝吸虫感染に関する予防プログラムの情報を収集した.また,両国で使用されている保健衛生教育の教科書を分析した.その結果,既にラオスでは,小学校用の教科書の中に,タイ肝吸虫感染に対する予防教育が導入されているが,内容や記述に誤りかおること,治療の方法等が述べられていないことが分かった. ・学校教育,学校保健に関するニーズ,健康意識等を把握するための調査を実施し,簡易質問紙を開発した. ・対象地域において,捕獲,摂取されている魚のリスク(感染を媒介するメタセルカリアが魚に寄生しているかどうか)を同定するために,タイのマヒドン大学において研修を受けた.また,当該分野の第一人者であるコンケーン大学のパイブーン教授から,これまでの東北タイ地域におけるタイ肝吸虫感染に関する調査と予防活動の現状に関する講義を受けた.また,さらに今後の研究協力関係を構築した. ・対象地域の小学校教師および保健所の職員と意見交換を行い,タイ肝吸虫感染の予防教材を開発し,ラオスでの小学校用の保健衛生教育の教科書の改訂時に開発した教材を提供した.
|