2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子ドット複合系における量子現象のダイナミクスに関する研究
Project/Area Number |
07J06711
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 朋廣 The University of Tokyo, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子ドット / 量子細線 / 励起状態 / スピン偏極 / パルスゲート法 |
Research Abstract |
本年度は量子ドット系における動的な測定手法であるパルスゲート法を行うための試料作製、およびパルスゲート法を用いた動的な測定の開始を行った。 まず、パルスゲート法を行うための試料作製では、十分な信号強度や明瞭な量子効果のために、試料構造の最適化を行い、電子状態のよく定まった少数電子量子ドットで高感度の測定が可能となった。 パルスゲート法を用いた動的な測定では、横結合型量子ドットにおける励起状態の観測を行った。外部回路と1つのトンネル結合で結合している横結合型量子ドットは、外部回路への結合によるデコヒーレンスが小さい等の利点をもつ。しかしドットに対して電圧バイアスを印加することができないため、これまでドット内の励起エネルギーを調べることが困難であった。そこで我々は量子細線と横結合型量子ドットとの複合系を用いて、細線のバイアス電圧を変化させながらパルスゲート法を行うことにより励起エネルギーを求める手法を開発した。細線にバイアス電圧を印加すると、2つの擬似的なフェルミ面をもっか非平衡な電子分布が形成される。これをエネルギー校正の指標として用いて、ドット内の軌道やスピン状態の励起エネルギーを求めた。 さらに我々はこの手法を発展させて、半導体中のスピン偏極の検出を行った。量子ドット中にスピンに依存した状態がある際には、ドットへの電子の出入りはスピン選択性を持つ。これを利用すれば半導体中のスピン偏極を調べることができる。我々は磁場中での量子細線を、偏極スピン源として利用して、スピン偏極を変化させた際に実際にドットへの電子の出入りが変化することを確かめ、横結合型量子ドットがスピン偏極検出器として動作することを示した。また、ドット中の2電子状態を用いれば、0磁場においても同様の手法でスピン偏極の検出ができることを提案した。これらの結果は、半導体におけるスピントロニクスに利用できる可能性がある。
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Research Products
(8 results)