2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規農薬開発を目的とした糸状菌におけるHis-Aspリン酸リレー系の分子基盤解析
Project/Area Number |
07J06775
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
萩原 大祐 Tohoku University, 未来科学技術・共同研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 糸状菌 / His-Aspリン酸リレー系 / 二成分制御系 / 農薬応答 / HogA MAPKカスケード / DNAマイクロアレイ / AtfA |
Research Abstract |
モデル糸状菌Aspergillus nidulansを対象にして、農薬応答におけるHis-Aspリン酸リレー系の機能解析を進めており、以下の2点を本年度の成果とする。(1)DNAマイクロアレイを用いて、農薬に応答した遺伝子発現解析を行い、His-Aspリン酸リレー系とその下流に制御されるHogA MAPKカスケードの制御因子を同定した。(2)さらに、これらのシグナリング経路の下流でAtfA転写因子が機能している結果が得られた。しかし、AtfAは農薬の感受性には影響を与えないことがわかった。 (1)においては、農薬処理により転写応答する因子を同定し、これらの多くかHis-Aspリン酸リレー系とHogA MAPKカスケードにより制御されていることを示した。これらの制御因子の情報を利用して、当該農薬(フルジオキソニル)の作用機作を分子レベルで解明する基盤知識となることが期待される。また、これらの情報伝達系が有している生理機能を理解するための重要な基盤知識となり、糸状菌の生理的な解析に有効な結果が得られた。糸状菌ではこれまでHogA MAPK経路の下流で機能する転写因子について明確にされていなかったが、(2)における結果からAtfA転写因子が機能することが示された。His-Aspリン酸リレー系、HogA MAPKカスケード、そしてAtfA転写因子へと連なる情報伝達経路が、農薬だけでなく浸透圧ストレスに対する転写応答に機能していることが明らかになった。また、この一連の情報伝達経路が胞子のストレス耐性にも深く関与しており、糸状菌の生活環の中で耐久器官である胞子の耐性能にも関与していることは興味深い。一方で、農薬の感受性にとってAtfAが必須でなかったことから、農薬の作用機作はより複雑であることが予想され、今後さらなる解析が必要である。
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Research Products
(5 results)