2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子集合体の形態形成とダイナミクスについてのメゾスコピック理論の構築
Project/Area Number |
07J06818
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田切 健太 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | パターン形成 / セルオートマトン / 反応拡散系 / 自己触媒反応 / 表面化学反応 / 非線形ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究では原子・分子レベルでの自己組織化の制御を主眼において、分子集合体の形態形成とダイナミクスについてメゾスコピックなレベルでの理論構築を目的としてきた。その為の具体的な課題として、表面化学反応系と自己増殖反応系における形態形成とダイナミクスを採り上げ、これらをモデル化した数値実験を通して、理論の構築を進めてきた。本年度は特に、自己増殖反応系における形態形成の研究を中心に進めた。 この研究では昨年度に引き続き、新たな役割を持つ因子を追加する事で構成的に構築した3つの自己増殖反応系モデルについて、反応拡散方程式(RD)とセルオートマトン法(CA)による結果の比較を行った。これらの手法の主な違いとして、構成要素の濃度の連続性(実数)または離散性(整数)、及び反応・拡散における決定論的または確率的ダイナミクス、の2点が挙げられる。 自己増殖する因子と栄養因子による最も簡単なモデルでは、CAにおける離散的・確率的ダイナミクスがバクテリアのコロニー形成で見られる様な多様な形態形成に本質的な役割を果たすことを明らかにした。増殖を抑制する因子を追加したモデルでは、CAとRDによる反応ダイナミクスが定性的に異なることを示し、その結果としてCAでのみ様々な局在パターンが発生することを明らかにした。また、自己増殖における活性化過程と抑制過程を考慮したモデルでは、反応ネットワークの非線形性とCAのもつ確率的な反応・拡散ダイナミクスにより、CAでのみ連続的な反応波の発生が維持されることを明らかにした。 一般に、RDはマクロな視点から現象をモデル化したアプローチであるのに対し、CAはミクロな視点から現象をモデル化したアプローチと位置付けられる。その意味で、RDとCAの比較研究は、マクロとミクロの中間であるメゾスコピックなスケールでの現象の理解と理論の構築を進めていく上で、今後非常に重要な研究となるものと考える。
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Research Products
(6 results)