2008 Fiscal Year Annual Research Report
イネ亜種間交雑における生殖的隔離因子の単離及び機能解析
Project/Area Number |
07J06821
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
水多 陽子 The Graduate University for Advanced Studies, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 生殖的隔離 / 雑種不稔 / 花粉 / ゲノム障壁 / 重複遺伝子 |
Research Abstract |
【表現型の観察】 隔離障壁がどのステージでどの様な表現型を示すのかを確認するため、隔離障壁の表現型を示す雑種個体の成熟花粉の観察を行った。その結果、花粉内の核の形態や数には影響は見られず、デンプン蓄漬にも異常は見られなかった。 一方、培地上での花粉発芽を観察した結果、雑種個体で花粉発芽に異常が見られた。この結果は、この隔離遺伝子が花粉発芽に何らかの影響を与えていることを示唆している。 【系統学的解析】 栽培イネの起源であるAゲノム種を中心とした野生イネを用い、候補遺伝子の配列比較を行った。その結果、この候補遺伝子は様々な系統で高度に保存されており、いずれの系統も必ず機能型と思われるN1かK6、またはその両方を持っていた。また、機能欠損型と考えられるK1とN6を併せ持つ系統が存在しないことから、この遺伝子は花粉に重要な機能を持つことが示唆された。他の顕花植物でもこの遺伝子が高度に保存されていることもこのことを示唆している。 【候補遺伝子のタンパク質の発現解析】 この遺伝子のタンパク質の有無を確認するためにペプチド抗体を作成し、これを用いてウェスタンブロット解析を行ったところ、日本晴ではN1、KasalathではK6と思われる内在性のタンパクを検出することに成功した。 今年度の結果から、この遺伝子は花粉伝達に重要な新規遺伝子であることが示唆され、そのメカニズムを解明することはイネの生殖過程について有用な知見をもたらすことが考えられる。生殖的隔離障壁の相互作用因子を一挙に解析した例はまれであるため、今後遺伝子が単離出来れば大きな成果となると期待できる。
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