2007 Fiscal Year Annual Research Report
大型有機分子をプローブとした原始星進化の初期過程の探究
Project/Area Number |
07J06825
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 南美 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教
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Keywords | 天文 / 電波天文 / 星形成 / 星間分子 |
Research Abstract |
本研究では、宇宙における最も基本的な構造形成過程である星形成に焦点をあて、その初期過程を内外の大型電波望遠鏡を駆使して明らかにすることを目的としている。計画初年度は、低質量星形成領域における有機分子、なかでも炭素鎖分子に着目して研究を進めた。その結果、以下のように非常に重要な成果を挙げることができた。成果の第一は、国立天文台45m鏡を用いて、炭素鎖分子が異常に豊富な低質量原始星L1527を発見したことである。通常の冷たい星間分子雲における炭素鎖分子生成と異なり、原始星近傍でメタンが星間塵から蒸発し、爆発的に炭素鎖分子を生成しているものと見られる(Warm Carbon Chain Chemistry:WCCC)。このような化学組成をもつ天体はこれまでに認識されたことはなく、今回の発見は、低質量原始星の化学組成に多様性があることをはじめて示したものとして特筆される。成果の第二は、45m鏡およびオーストラリアのMopla望遠鏡を用いて多くの原始星をサーベイし、第二のWCCC天体、IRAS15398-3359をおおかみ座領域で見出したことである。これにより、WCCC現象は特定の天体の特殊性に起因するものではなく、より一般的現象であることが明らかとなった。第三の成果は、WCCC天体(L1527,IRAS15398-3359)において、HCO2+分子を検出したことである。その強度の解析から、CO2分子が原始星近傍で星間塵から蒸発してきたとすると存在量が説明できないこと、従って、CO2分子は低質量星形成領域の気相においてすでに形成されていることを明らかにした。気相におけるCO2の挙動の理解は、原始惑星系円盤への化学進化を考える上でも非常に重要であることから、Astrophys.Jounalの速報誌に発表した。
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Research Products
(9 results)