2007 Fiscal Year Annual Research Report
超低振動数ラマン分光装置の開発とイオン液体の液体構造解明への応用
Project/Area Number |
07J06844
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡島 元 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イオン液体 / 液体構造 / 低振動数ラマン分光 |
Research Abstract |
次年度以降の実験の要となる新規の低振動数ラマン分光装置を開発した。これはヨウ素ガスによってレイリー散乱光を除去し、低振動数ラマン散乱光のみを分光する装置で、アルゴンイオンレーザーの単一モード発振線とヨウ素ガスの吸収線とが同じ波長になることを利用している。本年度はヨウ素ガスフィルターとポリクロメーターとを組み合わせた装置を開発した。本装置は、従来の装置とは異なり多重モノクロメーターを用いる必要がない。そのため感度の大幅な向上と測定時間の短縮が可能となった。 本装置は9.8cm^<-1>のラマンバンド(L-シスチン)まで測定できるほどの性能を有しており、これまでの我々の装置では30cm^<-1>より高振動数のバンドしか測定できなかったことを考えると、非常に高いレイリー散乱除去能を有すると言える。測定時間も従来の手法の100分の1以下であり、30秒程度でスペクトルを得ることができる。同じ領域を測定する他の分光手法と比較しても、この測定時間は非常に短い。本装置を用いることで、より低い振動数までラマン散乱測定ができるようになっただけでなく、過渡的な液体構造変化に対応する実時間低振動数スペクトル変化を測定することも可能となる。 上記の装置開発と平行して既存の装置を用いたイオン液体の研究も行った。本年度はイオン液体のカチオン種の芳香属性に注目し、低振動数スペクトルの形状を比較した。その結果、これまでの研究で得られていたイミダゾリウム系イオン液体の強い低振動数バンドが、芳香属系イオン液体には見られ、非芳香族系イオン液体には見られないことが分かった。この結果から、強い低振動数バンドが主にカチオンの運動に由来していることが確かめられた。さらにこの結果は、芳香族系イオン液体と非芳香族系イオン液体との液体構造に違いがあることを示唆している。
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